テッパチ!と水戸黄門

夏のドラマが始まっている。
数年前なら絶対見ただろう、面白そうなドラマがたくさんあるのに、
録画してそのままになっている。

ここ数年、ドラマをあまり見なくなった。
理由はいくつかある。
最も大きな理由は、欅坂46から櫻坂46を推すようになったこと。
アイドルはノンフィクションだ。
その活動を追うことは、そのまま成長物語を見ることだ。
もちろん、ありのままを見られるわけではなく、
ファンが目にするのは演出と戦略とクリエイティブによって
届けられる作品である。
つまり、これもドラマなのだ。
櫻坂46というドラマを追うことが一番面白い。

しかも、供給は多岐に渡るため、時間というリソースは
当然櫻坂に集中させざるを得ない。
それがドラマを見なくなった一番大きな理由のように思う。

2番目の理由は、恋愛というものに興味がなくなったこと。
最近は少なくなってきたものの、ドラマの多くは恋愛要素が盛り込まれる。
恋愛自体に興味がなくなったので、
ドラマを見ようという気にならなくなった気がする。

3番目の理由。それは気力の限界だ。
どんな仕事でも同じだと思うが、仕事を続けるためには、常に勉強が必要だ。

自分の専門分野だけでなく、社会の動き、法改正、ITに関わるあれこれ。
通常業務と並行しながら、仕事を持続するための周辺情報を追うだけで、
かなりの時間が必要となる。

そして、そこで必要となるのは時間だけでない。
最も大きいのは、気力だ。学び続ける気力。
定年やリタイアが当たり前だった世代と違い、
私たちの世代はできるだけ長く働き続け、社会参加をすることになるだろう。

その時必要なのは何より健康と体力だが、
これだけ社会が複雑化し、その深度がさらに深まる世の中では、
学び続けることが求められるはずだ。

そして、それは思った以上に気力、そして集中力が必要だと感じている。
走り続ける、までいかないにしても、歩き続けるには気力が必要だ。

そして、気力が必要なのは、仕事だけではない。
40代後半になり、家庭のこと、自分の老後のこと、
すでに老後を生きている親のことを考えなければならない場面が増えた。

気力というリソースも、時間やお金と同様に無限ではない。
あれやこれやと日々追われている私は、
「ドラマでドキドキハラハラ」に限られた気力が流れるのを
無意識にブロックしているのかもしれない。

だから、どう考えても感情がジェットコースターのように揺れ動くであろう
「六本木クラス」を録画したまま、まだ見ることができていない。

そんな私が今期のドラマで唯一見ているものがある。
それが「テッパチ!」だ。
もともと自衛官や消防士などの物語が好きということもあるが、
「テッパチ!」を初めて見た時、「ドラマとして王道なつくりだな」と思った。
起承転結がしっかりあって、キャラ紹介があって、
乗り越える壁が出現し、それがクリアされる。

きっと今後も彼らの前には困難が現れるだろうが、
おそらく仲間の団結力で乗り越えていくのだろう、という予測がつく。

だから、見ていてストレスがないのだ。ノーストレス。
安心して、楽しめる。

予想がつくのに、何で見たいのか、と思って気づいた。
これは、私にとっての水戸黄門なのかもしれない、と。

子どもの頃、なんでお年寄りは水戸黄門が好きなのか、不思議でたまらなかった。悪者が出てきて、いろいろあって、
でも最後は黄門様が印籠を出してめでたしめでたし。

毎回同じストーリーじゃん。先がわかってるのに、何で見るの、と思っていた。

しかし、今になると何となくわかる。
もう、物語を見てドキドキしたりハラハラするより、
安心してスッキリしたいのだ、と。

それに気づいた時、ちょっと怖くなった。
自分はこんなに老いてしまったのか、と。

しかし、テッパチだって、全部予定調和なわけじゃない。
ただただ真っ直ぐに見えた北村一輝の別の顔がちらりと見えたり。
それに町田啓太演じる国生宙の今後は何となく見えるけど、
佐野勇斗演じる馬場の着地点は予想しきれない。

それでも、安心して見ていられるのだ。

それに、町田啓太と佐野勇斗の爽やかさにテンションが上がる。
そこに気づいて、「まだ大丈夫だ」とホッとしたのだった。

もちろん、私も物語でドキドキしたり、ハラハラしたり、
まったくしたくないわけではない。
けれど、時間や気力というリソースは無限ではない。
そのことに気づいた今、
時間と気力をどう振り分けるか。
それがこれから一つのテーマになりそうだ、
と「テッパチ!」を見て思ったのだった。

いろいろ言ってしまったけど、「テッパチ!」は面白いです!
これからも観ます。









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