タイムパラドックス

1924年はアンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』が発表された年。豊作の年でめっちゃ好きです。ガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』、レジェの『バレエ・メカニック』、ルネ・クレールの『幕間』。バレエ・スエドワやバレエ・リュスも公演しています。そして、来年はいよいよ1925年。パリで万博、通称アール・デコ博が開催されます。たのしみすぎます。

戻って来る前提で、1924年、25 年にパリの芸術の中心にいられる人間としてタイムスリップしたいです。

2024年の技術を持ち込めば憧れの芸術家の皆さんには確実に会えるでしょう。音付きのカラー映像を見せてびっくりさせちゃおう!ちっこくて光る板(スマホ)を見せてびっくりさせちゃおう!21世紀では当たり前のことを言ったら有名人になれるかも!次から次へと邪念が浮かびます。
チートで名を馳せてみましょうか。
いや、タイムパラドックスが起こるのは困りますね。
でも、彼らがAIやパソコン、カラーの写真・動画を使って何を作るかはちょっと知りたいです。
コクトーにSNS教えたいです。たぶん好きだと思います。ディアギレフには怖がられて毛嫌いされそうです。だいぶ会いたいのにな。

でもやっぱり、1920年代が好きだから、その時代を変えるわけにはいきません。

とは言うものの、スコット・フィッツジェラルドが『グレート・ギャツビー』を書き終わった頃に「お酒はほどほどにして、これからも長編いっぱい書いてね」と言うお節介な友人として彼の前に現れたいです。「なんでそんなことわざわざ?」とか言われたら(君さ…酒に溺れてろくに書けない時もあってしかも長編書いてる途中で死んじゃうの…わたしは君の長編が好き…)という言葉は飲み込んでただ遠い目をします。個人的願望の押しつけです。あーあ過去変えちゃったかも!でもわたしがどういう友人として彼と関わるか、つまり、スコットが「この人の言うことなら聞こう」と思う人か、「この人は別に」と思う人か、それにもよるし、いくら信頼していても一言じゃきっと忘れてしまいますよね。どうせ彼は周りに散々「酒はほどほどに」と言われていたでしょうし。
”過去を変えちゃうかも”なんて傲慢かもしれません。しかもわたしがこのままタイムスリップしても、性格やらなにやら含めてスコット・フィッツジェラルドに一言かけられる人にはなれない気がします。そもそも英語ができません。タイムスリップ、むずかしいです。2024年に帰ってきて、きっとスコットは1940年に亡くなっていて、『ラスト・タイクーン』は未完で、「まったく…」と言って笑いたいのにな。


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