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【映画】ミッドナイトスワン わたし的解釈その3

益々、バレエに精を出すイチカ。ナギサもそれを見守る。
かけた愛情分、バレエが上手くなって行くイチカに、飼っている金魚とは比べ物にならない充足感を感じたんだと思う。誰かに必要とされて、誰かの為に生きる喜び。
イチカのためにお昼の安定した仕事に就こうと考えたナギサは面接を受けるが、LGBTに理解があるとは思えない対応をされ、また心にヤスリがかかる。
断られたのかな。きっと。
バレエ教室に月謝の支払いを待ってもらう様お願いしに行ったら、先生から月謝を免除にしても良いと言われる。だけど、プライドもあるし、何よりイチカに堂々とレッスンを受けて欲しいと思ったんじゃないだろうか。そんなわけで、免除の申し出を断る。
すると、コンクールに出るにはさらにお金が掛かると言われるが、その際に先生の口から出た「頑張りましょう、お母さん」という言葉に、削られ続けていた心が超回復して、暴走する。

男の為に風俗落ちしたミズキを頼って、自分も風俗で働く事を決意する。
いざ、客を目の前にして怖気付き、逃げるナギサ。激昂する客。なだめる黒服。なおも暴走が止まらない客。モップでその客の頭を思いっきり殴るミズキ。倒れる客。警察に連れて行かれるミズキ。国家権力に容赦なく男として扱われ、正気でいられないミズキと絶望するナギサ。恐らくミズキは風俗落ちと共にクスリにも手を出している。

結局ナギサは髪をバッサリ切り、男として就職を決めた。
イチカはナギサの愛情の重さにたじろぎ、拒否するが、結局はナギサの深い深い愛を受け入れた。

屋上でバレエを踊るイチカと煙草を吸いながらそれを見つめるリン。
リンはイチカの変化を誉める。イチカはリンの変化に気付くが、自分への称賛を否定することしか出来ない。そんなイチカにリンは「キスしていい?」と聞く。「いいよ」とただ受け入れるイチカ。
私は、恋愛感情うんぬんじゃなく、思春期の揺れる心のうごきの確認だと思った。

病院でとうとう、ドクターストップを言い渡されるリン。隣で「バレエをとったら、この子にはなにも残らない」と泣き崩れるリンの母。
リンは診察室の外で待っていたイチカにもたれ掛かる。
本当に泣き崩れたいのはリンのはずだ。自分の生きる価値だったバレエが出来なくなり、母から無価値の烙印を押される。絶望。

コンクールが近づきメキメキ力をつけるイチカ。指導に熱が入る先生。

コンクールの日、緊張でいっぱいのイチカにリンから電話が掛かる。雑音が入り何を言っているかわからないまま電話が切れる。若干の異変を感じるイチカ。それでも一曲目を踊るイチカ。
一方リンは両親の知り合いの結婚パーティーに参加させられている。
高層ビル屋上で、中身のない会話、退屈なパーティー。
パーティーの途中、リンはいきなり踊り出す。イチカがコンクールで踊っているのと同じ踊り。シンクロする。
周りはリンの踊りに感嘆の声を上げるが、新郎新婦が登場し、皆がそちらに目を奪われる。リンはそのまま大空にジャンプした。
あの怪しいバイトを続けられていたら、リンがイチカに恋をしていたら、リンがコンクールを観に行っていれば…
リンがいなくなった事、いつ気付いたのかな?救急車が来て周りが騒がしくなるまで気付かれなさそうで、悲しい。

二曲目への準備の際、イチカの髪を梳かすナギサの顔がすごく優しい顔をしてて、素敵だなって思った。
超余談だが、昔SMAPのコンサートグッズ販売のバイトをした事があって、その時の草彅さんのクリアファイルの笑顔も素敵だったなと、17年経った今、思い出す。

二曲目の出番が来るが、イチカは動き出せない。先生から声をかけられ、舞台に踏み出すが、客席にリンの姿を見つけて固まってしまう。
ナギサは異変に気付くが、どうしていいかわからない。
そんな中、客席をドタバタ走って舞台に駆け上がる女性。イチカの母親サオリだ。立ちすくむイチカを抱きしめる。抱きしめ返すイチカ。

ナギサは咄嗟のサオリの行動に、超えられない母性の壁を感じたんじゃないかと思う。
個人的にはただの性格の差だと思うんだけれど。

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