草野原々「これは学園ラブコメです。」登場人物元ネタ解説
忙しくはありましたが、草野原々さんの新刊、「これは学園ラブコメです。」を最近読み終わりました。これはまたすごい作品でした......。これがよく世に出たものだと、色々と驚いていて感想が上手くまとめられません。すごいものを読ませられてしまったな、という感じです。
ちらっと調べてみたのですが、私の観測範囲で草野原々さんの「これは学園ラブコメです。」の登場人物の元ネタについて話している方がいらっしゃらなかったので、一通り解説しておきますね。
まず主人公の高城圭の元ネタは、歴史改変SFの名作「高い城の男」とその作者フィリップ・K・ディックのK(けい)ですね。「高い城の男」は、第二次大戦で枢軸国が勝利し、ナチスと大日本帝国による分断統治下にあるアメリカを舞台とした作品です。
この作品は、枢軸国統治下のアメリカ(虚構世界)で”第二次大戦で連合国が勝利した”という内容の小説(虚構内虚構)が密かに流行している、という二重構造をもつメタ的な小説です。近年でもドラマ版がアメリカで制作されるなど、ディックを代表する作品として非常に高く評価されている作品です。
また、作者である草野原々さんより、補足ツイートをいただいたので併せて記載しておきます。
高城圭の幼馴染、河沢素子(こうぞう もとこ)の元ネタは、樋口恭介さんの小説「構造素子」ですね。「これは学園ラブコメです。」の冒頭に引用されているエピグラフも、「構造素子」からのものです。
この作品もまた、メタフィクションを活用した階層構造をもつ作品です。さきほどのエピグラフからも分かるように、草野原々さんがフィクションという構造に対して意識的に取り組んだ作品が「これは学園ラブコメです。」なので、その点に意識して読むと多少整理がつくかと思います。
金髪ツインテールのお嬢様転校生の果志奈モモの元ネタは、ミヒャエル・エンデの「果てしない物語」と「モモ」ですね。どちらも児童文学の名作として有名ですが、特に前者「果てしない物語」は虚構内現実と虚構内虚構が並立して語られるというメタ的な構造をもつ作品です。
読書好きの虚空レムの元ネタは、架空の書評集『虚数』と『完全な真空』、そしてその作者スタニスワフ・レムです(『リゼロ』のレムや、『エヴァ』綾波レイも頭に浮かびますが)。レムの作品の中でも、メタ構造が顕著に表れた作品になります。
そして生徒会長キャラの言及塔まどかの元ネタは、小説『Self-Reference ENGINE』(自己言及機関)と、その作者である円城塔さん、そして『魔法少女まどか☆マギカ』の鹿目まどかでしょうか。これについてもまた、物語の構造というものに非常に関連の強い要素が元ネタになっています。
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