見出し画像

水族館をこねる

水族館がすきで、ちいさなころはよく水族館へ通った。暗い室内で魚の鱗がきらきら光るのを見るのがすき。海の生き物たちについて勉強したかったから大学では生物学を専攻したんだけど、尊敬する教授に水族館ってのは生命倫理上いかがなものか、って言われちゃって愕然とした。た、たしかにそうかも、海の生き物たちがかわいそうかも、とか急に思い始めちゃって、実に単純な私。
単純な私はそのまま大学を中退して、ガラス工芸の道に進むことにする。ふゆは網走で流氷探検ガイドツアーの派遣社員として砕氷船の行手に転がってるアザラシやらなんやらをころころ転がしてどかす仕事をしてお金を貯めて、夏になると稚内へ行ってガラス細工を作りつづけた。
透明なウニ、透明なサケ、透明なホッケ、ヒラメ、マグロ。毎日毎日海へ行って魚を釣って、釣った魚の魚拓をとるようにガラスをとかしてこねてひねって魚の形をつくっていく。完成したばかりのあつあつの魚たちを大きな水槽に投げ入れるまでがその日の仕事。じゃぽん、じゅーーって音、なかなか心地よくてすき。真っ赤な魚が透明になるまでじっと見るのもなかなかよい。
あといくつの魚をつくったら水族館ができるだろうか、と思う。暗くてきらきらで生命倫理上いうことなしの水族館、はやくできるといいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?