遠藤周作『深い河』きみはずっと、綺麗な傍観者のままでずるい。
美津子の破壊衝動。純然たるものに対する嫌悪と、ひそかな憧憬。とてもよくわかる。
どうせ性欲に支配されてしまうだろう信仰や愛が、どうしたって許せない。
神に祈るのと同じ手で、自分の乳房へ触れることの落胆。結局、世の愛なんてそんなものなのだという諦めと呆れ。あーあって思うよね、本当に。
でも大津は、結局最後まで美津子を抱かなかった。美津子は、モイラにもテレーズにもなりきることができない。中途半端な女だと思った。
結局、愛を、信仰を、疑いきることすらできずに、時折大津の純粋さに救いを求めてしまう。口では大津を罵りながらも、愛の存在の確かさに、あるいはその存在の無価値さに、血の一滴すら賭けることができない。
きみはずっと、綺麗な傍観者のままでずるい。