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遠藤周作『深い河』きみはずっと、綺麗な傍観者のままでずるい。

愛を求めて、人生の意味を求めてインドへと向かう人々。自らの生きてきた時間をふり仰ぎ、母なる河ガンジスのほとりにたたずむとき、大いなる水の流れは人間たちを次の世に運ぶように包みこむ。人と人のふれ合いの声を力強い沈黙で受けとめ河は流れる。

講談社BOOK倶楽部より


美津子の破壊衝動。純然たるものに対する嫌悪と、ひそかな憧憬。とてもよくわかる。
どうせ性欲に支配されてしまうだろう信仰や愛が、どうしたって許せない。
神に祈るのと同じ手で、自分の乳房へ触れることの落胆。結局、世の愛なんてそんなものなのだという諦めと呆れ。あーあって思うよね、本当に。
でも大津は、結局最後まで美津子を抱かなかった。美津子は、モイラにもテレーズにもなりきることができない。中途半端な女だと思った。
結局、愛を、信仰を、疑いきることすらできずに、時折大津の純粋さに救いを求めてしまう。口では大津を罵りながらも、愛の存在の確かさに、あるいはその存在の無価値さに、血の一滴すら賭けることができない。
きみはずっと、綺麗な傍観者のままでずるい。

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