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11月17日(金)

本物はあまりに綺麗すぎるから、水面に揺れる月で精一杯だった。鏡に反射させた光をつないで、照らす先がわたしであること、なんだか申し訳ない。人工物と人工物との間をぬってあるくと、青い匂いも、ついぞたどれなくなってしまった。生やすことのできない月桂樹の種なんかを持て余している。あるけばあるくほど、ときみが呆れて呟いている間も、わたしはずっと、頭上の枯れ枝にとまる一羽の鳥だった。暗い夜だ。暗さがきみの言葉を頬張ってゆく。吐き出される白い息や、震える指先や、赤く染まった耳なんかを全部食べてしまえればよかったのに。

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