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11月24日(金)

香水

他人のかおりが手首から漂う。
さみしいのがばれてしまったかのよう。
日差しの中でいちじく色のカーテンをまとうみたいに、肌は重たい衣をまとう。気をつけないと裾が地面についてしまうから、わたしずっと回っていた。自転をして、そうすればこの生活がずっと続いていくかのように。新しく、重たく、意味を持つのはいつも一瞬だけで、結局はただの砂に帰ってゆく。好きだと思ったあのパチュリの香りも、いまはもう枯れ果ててしまった。わたしがこうやって生きている限り、他者は他者でなくなり続け、日差しは溶け、境界線は綻び、私の皮膚の下へと仕舞い込まれてしまう。
永遠の他人でいてください。あなたを抱きしめたとき、わずかに擦れる布地の音が好きだから。
永遠の他人でいてください。あなたがなにかを語る夜に、いつまでも驚いていたいから。

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