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#書く術 note 第7回 直塚大成 エッセイNo.4 『北条政子は男である。』


田中泰延です

こんにちは。
SBクリエイティブより本年10月に刊行される(はず)の新書、
『書く術』製作委員で、教官担当の田中泰延(風間杜夫)です。

本書は、コンテスト応募によって選ばれた直塚大成さんに、

小顔

私、田中泰延がいろいろと文章指導する、
という内容になる予定ですが
直塚さんにはその本筋とは別に、
ひたすら毎週なにかのエッセイを自由に書いていただいてます。

直塚さんが66名様の応募者のなかで優勝されたのはこちらの一文。

なんと、この応募の後も、直塚さんはずっとマサコのことを考えておられ、
新しい気づきと学びと出会いと最高の仲間に感謝しているそうなのです。

マサコに関する新しい発見とは。

直塚大成さんによるエッセイ、本日お送りする第4回は、こちらです。
それでは、直塚さん、お願いします。


『北条政子は男である。』

直塚大成

「北条政子で仮説を立てろ」と言われたら、そんな仮説を思いつく人も多かろう。僕も思いついた。、さすがにアホな仮説だと思って滅却した。北条政子はどう考えてもスーパーウーマンじゃねえか。そう思っていた。昨日までは。

突然だが、あなたはカクレクマノミのオスとメスの区別ができるだろうか。僕はできる。昨日調べたからだ。オスとメスの区別をするためには、一番体の大きなやつを見つけるとよい。いちばん体の大きいやつが、メスである。クマノミは基本的にイソギンチャクの近くで生活し、たった一組のつがいとたくさんの幼魚が生活している。大きさでいえば、大・中・たくさんの小、といった感じだ。ここで体が一番大きいのがメスで、次に大きいのがオス。そして小さい幼魚たちは「雌雄同体魚」といって、オスでもメスでもなく、どちらの役割を果たすことができる。オスとメスがいて、もしも一番大きいメスが死ぬと、メスの次に体の大きいオスがメスになる。しかしそうすると、オスの座が空いてしまう。そこで幼魚のなかで体の一番大きいやつがオスになる。なんとその繰り返しなのだ。だからといって、それが北条政子と何の関係があんねんと思ったそこのあなた。注目して欲しいのは、カクレクマノミのオスがメスになると、尾びれが黄色から白色になる点である。つまり、白色の個体は、かつてオスであったメスなのである。



……おわかりいただけただろうか。


繰り返す。白色の個体は、かつてオスであったメスなのである。いまさら言うまでも無いが、日本人は黄色人種だ。このまえTwitterで見ためちゃくちゃかわいい石原さとみも、黄色人種である。白い肌とはいえ黄色である。黄色なのだ。一般的に、いちど黄色い肌で生まれると、黄色い肌のまま死ぬ。世界広しといえど、人間で黄色から白になる個体など聞いたこともない。

…………。


ここでもうひとつ、日本神話の女神アマテラスには、本当は彼女が男神だったのではないかという興味深い仮説がある。トンデモ論かと思いきや、意外にそうでもない。女神アマテラスは太陽神とされているが、神道において男神は陽、女神は陰を司ると言われている。そうすると女神アマテラスは月の神でなければおかしいのである。もともと太陽神として生まれた男神アマテラスは、どこかのタイミングで性転換を余儀なくされた可能性が高い。しかし誰が何を思って、そんな神への冒涜をしたのだろうか。

有力な説のひとつとして『日本書紀』がある。神話をまとめたこの歴史書が編まれたのは720年。時の為政者には41代持統天皇、43代元明天皇、44代元正天皇など女性天皇が多かった。日本書紀を編纂した舎人親王たちが、女性天皇の皇位継承を正当化するために太陽神アマテラスを急遽女神にしたのではないかという理屈はなかなか興味深い。712年『古事記』編纂から、720年『日本書紀』編纂までの間隔はたった8年。古事記では黄泉の国でウジ虫だらけになるイザナミの逸話が、日本書紀ではなんとその話ごとバッサリ切り捨てられている。そこにはなにか政治的意図があるのではないか。中国思想に配慮したという意見が有力らしいが、女性に配慮したからという説もなかなか説得力がある。何より面白い。しかし、今回、その面白さを凌駕する仮説が生まれた。それがこちら。

「北条政子は、オスからメスになった」


こういう知識を先に知っていたら、あのときもっと趣深い文章が書けただろう。少なくとも、家族や友人に胸を張れる文章は書けたはずだ。白粉? そんなもの知らん。というわけで、続きは『書く術』が売れたあとの続刊『もっと!書く術』の選考に残しておこうと思う。



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