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ラーメン二郎で考える戦略ごっこ

コレクシア芹澤氏の著書「戦略ごっこ」は、非常に多くの参考文献(しかも英文)を引用しており、その内容をマーケティング実務者以外が理解するためには十分な読解力が必要でした(私の場合)

とにかく場面分けをして考える。

正直言って、初めて読む人の多くは一度の読書で完全に理解することは難しいかもしれません。私も本書全体のうち30%くらいしか理解できていない自覚があります…。

しかしながら、この本を読むことで、世の中一般で語られる多くのマーケティング手法が原因と結果を取り違えて一般化(〇〇が売れたのは△△が理由に違いない→実際は売れたから△△だった)されていることや、有名なマーケターの発言に依存している理論が多いことなどに気付かされます。

言われてみれば、19XX年に提唱された〜〜といった、権威的マーケティング論について、その真偽性を疑わずまるで正解のように扱い、いざ実践に落とし込むも思うような結果が出ず、先導していたマーケティング担当は解任される…。

といったビジネス上の事故は、表出していないだけで頻発しているんじゃないかなと思います。(実際に私はそのような現場に出会したこともあります。)そうなると、世間にあふれるマーケティングの成功事例は生存者バイアスが働き、よりこの傾向を強めてしまいます。

つまり、とあるマーケティング理論の1つの成功の裏に100件の失敗があるかもしれない。本書を読むことで、そのような新たな視点を得ることができるでしょう。

とはいえ本書で紹介されている過去の理論を反証する新理論について、著者は冒頭から「場面分けして考える」ことを強調しており、特定の商品カテゴリに関連づけて読むことが重要です。

洗剤と自動車とBtoBのサービスが同じように売れるものではないという超絶当たり前のことを意識し、今著者が解説している理論が当てはまる商材が何かを正しく認識しないと、戦略を誤解してしまう可能性があります。

ラーメン二郎で考えてみる。

※ここから先は、浅学による思いつきと壮大な解釈が含まれます。

興味深いことに、この本で解説されているいくつかの法則を「ラーメン二郎」を例にして考えてみると、理解がしやすくなることを発見しました。(本当か?)

例えば、浸透率とロイヤルティの関係についてを解き明かす「ダブルジョパティの法則」は、ラーメン二郎において、ヘビーユーザーがロイヤルティを高めたのではなく、本店→暖簾分け→インスパイア系とSKUが拡張し、浸透率が高まることでロイヤルティが高まったと解釈すると腹落ちします。

いきなり!ステーキみたいに、インスパイア系のような競合店舗が登場して本家の存在価値が危ぶまれたパターンと違い、ラーメン二郎のインスパイア系は結果としてラーメン二郎の価値を高める存在になっているのが面白いですよね。それだけラーメン二郎のオリジナリティが際立っているのだと思います。

さらに、2000年代のヘルシー志向の裏で「背徳メシ」「デカ盛りグルメ」などCEP(カテゴリーエントリーポイント)が増加したことなども、ラーメン二郎のブランドの強化に寄与したと言えます。ラーメン店が出店していないエリアでも、コンビニでのプライベートブランドの二郎系ラーメンが発売されました。

このようなアプローチにより、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティが高まり、結果として「二郎系ラーメン」というカテゴリ自体が誕生・強化されていきます。

「二郎系ラーメン」の市場シェアが高まれば高まるほど、結果として始祖であるラーメン二郎のロイヤルティも高まり、「いつかは三田本店で食べてみたい」という欲望も生まれているように思います。コアユーザーは店舗ごとの味の違いを楽しんで回遊します。

そして、「今日はガッツリ系だな」「朝飯抜いたから昼はラーメンで」など特定のシーンでのプレファレンス(選好性)が高い状態がキープされ、二郎系ラーメンを食べたいとランチ・ディナー時の想起率が高まり、結果として「ラーメン二郎」は常に行列ができる人気店となったのではないでしょうか。

ラーメン二郎のブランドにおけるニンニクマシマシアブラカラメ・・・といった「呪文」がもたらすロイヤルティへの影響や、「ラーメンを食べる」という行動に替えて「二郎する」という動詞が誕生したことも、非常に興味深い現象です。商品やサービス自体が動詞化するサービスはプレファレンスが高くて強いですよね。

このように考えると、飲食店も密接にマーケティングの概念と結びついているように感じられます。1日最大2回の外食需要の取り合いは熾烈を極めます。ラーメン二郎のライバルは、他のラーメンでもあり、マクドナルドでもあります。ましてや、キッチン家電やダイエットアプリの可能性もあります。

世の中の事象を抽象で捉え、どのような戦略を取るのか、今後も思考と学びを深めたいと思います。

ちなみに私は大学生の頃に代田橋のラーメン二郎を食べたのを最後に、かれこれ10年間は食べてません。

(え……?よく食べているみたいな口ぶりでよく書けるな…..と思った方、安心してください。これを書きながらラーメン二郎の口になってます。)

この本をきっかけに世の中のさまざまな現象・事象を考え直してみることで、マーケティング戦略の理解が深まり、新しい視点を持つことができるのではないかなと思います。

あわせて読みたい周辺書籍

私は、まだ理解度が30%くらいなので、バイロン・シャープ教授の「ブランディングの科学」などレファレンスの訳本なども読んでみたいと思います。(原文ちゃうんかい)

いきなり戦略ごっこに入る前に、トライバルメディアハウスの池田紀行氏の「マーケティングつながる思考術」を読んでみるのもおすすめです。
戦略ごっこと同じ内容を解説してるパートもありますが、本の導入からロールプレイを挟んだりと親しみやすい表現が多く、戦略ごっこと比較して難易度は少し低いと思います。

「マーケティングつながる思考術」の本文内にも出てきますが、前提としてビジネスコンサルタント・著述家の細谷功氏「具体⇄抽象」トレーニングは必読です!本文でもマーケターは全員必読と書いてあります!

文・ウラタコウジ From ATARU PR inc.

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。

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