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【学科】ふじようちえん

前回からの続きです.

【解説】
「ふじようちえん(手塚貴晴+手塚由比,2007,東京都立川市)」は,楕円形の平面計画で行き止まりの無い空間構成となっており,園児がデッキ張りの屋上へアクセスし,走り回ることができる.保存樹木を建築に取り込んだり,引き戸を多用し,それらを全て開放することで,園舎(内部)と園庭(外部)が一体化され,子ども達は自然の中で活き活きと過ごすことができる.その様子は↓のYou Tube動画が分かりやすいです.

内観写真や,平面図はコチラをご覧ください.

内観写真と平面図

設計者である手塚貴晴さんによるプレゼンはコチラ↓

この幼稚園は,日本有数の規模を有する私立幼稚園です.老朽化し,度重なる雨漏りに悩まされた古い木造園舎を建て替えた.新しい園舎は,園舎そのものが「巨大な遊具」というコンセプトで計画されていった.

園児たちが自由に走り回る大屋根は,園庭の延長でもあり,一方向に貼られたウッドデッキは,水勾配に従って内側(園庭側)に傾いている.この傾きのおかげで,水平な場合に比べ,園児たちが円弧に沿って走りやすくなっている.

内周側の天井高は2.1mと低く抑え,地上部分にある園庭との距離を近づけ,光景として繋がりやすくしている(外周側の天井高は2.25m).園庭でのイベントやセレモニーの際には,↑画像のように,内周側の縁に園児たちが座り,手すり越しに園庭の様子を観覧するギャラリーにもなる.

園舎の内部空間は,すべて園庭を向いており,求心性や一体感による「一つの村」のような関係を狙っている.

屋根には,トップライトが20ヶ所,設備を覆った木の箱が8ヶ所あり,それらは不均等に並べられている.地上部分から屋根部分への上下移動は,階段が3ヶ所,エレベーターが1台,すべり台が1台設けられている.すべり台は,緊急避難用でもあるが,遊具の一つとして,上下空間をつなげ,園児たちの活動領域を立体化している.

さらに,3本の大きなケヤキが園舎の内部から屋根を貫いている.屋根からだと,斜め横へと伸びる枝に園児が登りやすく,また,屋根と貫通する樹木の隙間には,転落防止用のネットを設置している.

園舎の内部と外周部には,すべて木製引き戸(内側75枚,外側99枚)で開放可能となっている.室内には基本的に間仕切り壁が一切ない.家具になるような木箱(1辺300mmの立方体の桐の箱)を積んで,緩やかに区切っている.この木箱は園児たちが持ち運べるような軽さや丈夫さにして,遊び道具の一つになることも意図されている.

平成23年の一級建築士「学科」試験に出題された知識です.

【計画問題コード23161】正しい記述かどうか?
ふじようちえん(東京都立川市)は,屋内の間仕切壁が少なく,引戸の多用により屋外ともつながる広々とした空間の上に,自由に走り回れる円環状のウッドデッキを設けた屋根がある幼稚園である.

平成23年にはじめて出題

【解答】○(正しい記述である)
 続く


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