見出し画像

【西洋建築史】ル・トロネ修道院(フランス)

前回からの続きです.
平成29年の一級建築士試験には,次の知識が問われました.

【問題】◯か×で答えよ
ル・トロネ修道院は,ゴシック様式の建築物である.


【解説】
ロマネスク建築は,ヨーロッパ各地に建てられた修道院建築により,進化・発展していきました.

では,修道院とは何なのか?
まずは,教会と修道院の違いを知ってください.教会とは,キリスト教文化圏において,地域コミュニティの核となる施設であり,地域住民の暮らしのよりどころです.一方,修道院は,修道者(=神のみに従う生涯を実践するために「清貧・貞潔・従順」の三つの誓いを立て,世俗を離れた生活を送る者)が共同生活を営む場です.教会は,地域の中心に建てられましたが,修道院は,逆に,人里から離れた郊外にひっそりと建てられました.

その代表的建築物が,ル・トロネ修道院です.修道院建築で,一級建築士試験に出題されているのは,ル・トロネ修道院のみです.初期のロマネスク様式であり,石造りのヴォールト屋根が採用されたばかりの建築である.

なお,ロマネスク建築は,ヨーロッパ各地に建てられた修道院建築によって,進化・発展を遂げてきました.一級建築士試験対策としては,次のように覚えておきましょう.

修道院建築=ロマネスク様式
・ぶ厚い壁
・小さな窓(力学のデザインがまだ未熟で大きな開口部を設けられない)
・半円アーチ
・断面がかまぼこ状の天井
 (その後,交差ヴォールトが発明され,交差リヴ・ヴォールトへと進化)

↓のYouTube動画でル・トロネ修道院のロマネスクな世界を倍速視聴してください.初期の頃のロマネスク建築であるため,石積の技術が未熟で,天井は低く,窓が小さいため,取り込める自然光の量は少ないが,逆に,神々しい空間として,訪れるものを魅了させてきました.この修道院は,清貧を信条としており,装飾を避けた質素なデザイン.敷地の高低差を活かし,段差が多いこと特徴です.

したがって,問題文の記述は誤り.ル・トロネ修道院は,ゴシック様式でなく,ロマネスク様式の建築物です.

【解答】× 続く


【参考となるYou Tube動画】時間のない方は視聴不要

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?