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【日本建築史】円覚寺舎利殿

前回からの続きです.

武士が政治を行うようになった鎌倉時代.そこから,室町,安土桃山,江戸時代へと続く武家社会に禅宗は大きく歓迎されます.その理由のYoutube解説はコチラ↓※この動画,あまりに僕の心に刺さりすぎて何十回も視聴しています.時間のある方には,まぢでお薦め!

なぜ,禅宗がそこまで幕府をはじめ,武家社会に受け入れられたのか?

そこには,武家社会の思惑がありました.というもの,それぞれの仏教宗派は一神教であり,そうなると,「仏さまと将軍(武士のトップ)とどっちが偉いの?,武士たちはどっちに従うの?」という究極の選択問題があった.

その点,禅宗は無神教(仏様に祈るのではなく,メンタル コントロール メソッドとのようなもの)であるため,家来との間で絶対的な主従関係を構築していきたい武家社会にとって,非常に都合のよい仏教だったのです.

なので,『武士は禅宗が大好き』と覚えておきましょう!

そんな「禅宗様」の名作建築は一つしかありません.それが円覚寺(えんがくじ)舎利殿で,平成19年,22年の一級建築士「学科」試験に出題されています.

【問題】
「天竺様(大仏様)」の特徴として,組物は,柱頭だけでなく柱間にも並び,組物間の空きが小さいことから詰組みと呼ばれている.

【解説】
鎌倉時代には,「大仏様(天竺様)」と,「禅宗様(唐様)」という2つのNew建築様式が中国から伝わる.それが鎌倉イノベーション.「大仏様(天竺様)」建築は,肘木を柱の側面に差し込んだ「挿肘木(大仏様組物)」が特徴で,柱と柱を貫などの横架材でつなぎ,大架構を可能した様式である.「東大寺南大門」,「浄土寺浄土堂」がその代表作である.

問題文にある「詰組み(つめぐみ)」は,禅宗様(唐様)の特徴である.

【解答】×


【問題】
「唐様(禅宗様)」の特徴である,上部が曲線をなす開口部は火灯(かとう)と呼ばれ,鎌倉時代後半に初めて用いられている.

【解説】
「禅宗様(唐様)」は,屋根の反り,深い軒,扇垂木,海老虹梁,火灯窓(上部が曲線をなす開口部)など緻密で繊細な意匠が特徴である.「円覚寺舎利殿(鎌倉時代,鎌倉市)」がその代表作である.

また,「組物」は,和様のように柱の上だけでなく柱と柱の間にも入れる「詰組み(つめぐみ)」となっている.断面図は↓です.他の建築物の断面構成と比較しておきましょう.

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尚,円覚寺舎利殿の一層目の両端には,裳階(もこし)がある.現代でいう下屋部分のようなもの.この話は,まだ,一級建築士「学科」試験には出題されていませんが,近いうちに新問題として出題されることでしょう.

【解答】○ 

尚,円覚寺舎利殿には,桔木(はねぎ)という技術が使用されています.桔木は,平成30年の一級建築士「学科」試験で問われた知識です.

【問題】
桔木(はねき)は,梃子(てこ)の原理を利用して,長く突き出ている軒先を支えるために,軒裏から小屋組内に取り付けられる材をいう.

【解説】
桔木(はねき)は,梃子(てこ)の原理を利用して,長く突き出ている軒先の加重をを持ち上げるために,軒裏から小屋組内に取り付けられる丸太材をいう.軒を深くするために屋根を緩勾配にすると雨漏りの確率が高くなってしまうが,桔木を用いる事で,雨を受ける屋根は急勾配に,建物から外側にある軒先を緩勾配とする事ができる.

【解答】○ 

続く

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