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故郷にて⑤

 コロナワクチンの副作用で、37度5分の熱が出た。半日寝込む。

 以前すい臓の手術をした時、ベットでただ時を過ごす時間がただただつらかったことがある。それは、体を思うように動かせない自分へのいらだちであり、頭がうまく働かない自分へのいらだちでもあった。今思うと、手術したての自分に対してあまりにも鞭打っていたな、と反省しきりである。

 自分に優しくすることが、こうも難しい。
甘やかすのは、得意なくせに。

 「自分を甘やかすこと」と「自分に優しくすること」の区別がいまだにつかない。ただ最近少しずつ分かってきたのは、「やらなければいけないことを放置している」のは確実に「自分を甘やかす」カテゴリに入るということ、そして「頑張らなければ」と自分に鞭打っているときこそ「自分に優しくしなければならない」ということ、である。今日の熱が出た私は後者にあたる。

 37度5分の熱が出た友人に対して、私は「勉強しろ家事をしろ!」と言うだろうか?絶対に言わない。どころか絶対に止めるだろう。自分を友達のように優しく扱わなければいけない。だって、これから先いろんな人が私の前からいなくなったとしても、私だけは私のそばにずっといるわけだから。乱暴に扱うわけにはいかない。

 自分を責めても本当に万に一つの得もない。他人を責め立ててもどうしようもないのと同じである。それよりも、ほめておだてて、いたわって、自分を上手に使いこなしていくしかない。私はこのように生まれ、このように育った。そしてこのような過去を持っている。しかしそれは、これから先も「このように」していいというわけでもないし、「このように」なるということも意味しない。自分でまずいと思っているなら、過去がどうあろうと、自分がどうであろうと、未来を変えなければならない。

 そして、未来を変えたいと思うなら、これまで通りのアプローチでいいはずがない。

 変わりたい、と思う。そして、きっと変われる、とも思う。きっと自分はよりよくなれる。今日はゆっくり休んで、自分をいたわって、明日もしよくなっていたら、その時は自分を「甘やかす」ことなく嫌なことを乗り越えていこうと思う。

 頑張るために、今日を休む。忘れずにいたい。


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