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インディペンデントでオンリーワンなセルフビルドされたコンセプトとコンテクスト

2018年9月16日。僕は今、オーストリア・ウィーン国際空港のレストランに座っている。もう見慣れた景色だ。何度ここに座っただろうか。

僕は脳内から記憶が消えて行くのが早い。この二週間の出来事を書ける範囲でドバァーっと出し切ろうと思うのでメディアアート、医療福祉、デジタルファブリケーション、音楽、クラブ、ビジネストリップそのものにご興味ある方はお付き合いください。

*09/06(木)
13:35 東京/成田空港 出発
18:35 ウィーン/シュヴェヒャート国際空港 到着
22:20 ウィーン/シュヴェヒャート国際空港 出発
23:00 リンツ 到着

今回の旅の主目的はこれ。ARS ELECTRONICAである。世界最高峰のメディアアートの祭典への参加。昨年からUbdobeで始めたデジリハ事業を展開していく上で欠かせない存在だと思っているのでうちのCFOを連れて参加したのだ。だらだら書いてもしょうがないので、手短に感情のままに書くと、必要なのはコラボレーションとかイノベーションとかコミュニケーションとかそういうんじゃなくて、『インディペンデントでオンリーワンなセルフビルドされたコンセプトとコンテクスト』なんだと思った。言っている意味がわかるだろうか。独立した唯一無二な自己完結可能な概念と背景。直訳するとなんかおかしくなっちゃうけど、なんかこんな感じ。

もちろん、コラボレーションとかイノベーションとかコミュニケーションとかは必要。だけど、僕が感じたのは根幹の話。アルスに参加している全世界のメディアアーティストや様々な分野の研究開発者は、はっきり言って他者なんて気にしていない模様。気にしていないようで、世界の気候変動・人口増加・食糧難・難民問題・人種差別などなどに関するテーマを取り上げて追求している。全く意味のわからない作品がたくさんある。意味があるようでない作品もある。意味をつけようとするなというメッセージの意味ありげな作品もある。もうなんだか意味がわからない。


この人達は、勝手に、自分が追求したいことを、ひたすら追求している。

ただ、それだけだった。

あーそっか。そうだよね。全ては自由だった。

そんなことを再確認したアルスエレクトロニカだった。


*09/10(月)
17:20 ウィーン/シュヴェヒャート国際空港 出発
19:15 アムステルダム/スキポール空港 到着

オランダ・アムステルダムは今回周った3カ国の中でも最も気に入った都市だった。

理由はいろいろあるけど、とにかく面白いのが「人」。もうみんな自由。やりたいことをやりたいだけやっている。なんなんだこの人たちはって思う。けど、その自由な生き方を全うするために物凄い色々な努力を積み重ねている。

まず、アムスでの宿を提供してくれたLucas De Man。

いや、かっこよすぎだろ。

アクターでレポーターでアーティストでクリエイティブディレクターでメディア企業の社長である。

いや、かっこよすぎだろ。

家も、ものすっっごでかいしオシャレ。

Lucasが手がけるEYEという作品が僕には非常に刺さった。これは人によると思う。簡単にいうと、自分を見つめ直す的なコンセプトなんだけど、なぜか僕は家族をずっと思い出して会いたくなってノスタルジックになって泣きそうになってしまった。

そんな様々な作品を生み出し続けるLucasは実は今年デジリハの取材をしてくれた国外メディアの一人だった。これも今年ヨーロッパ中で放映されることになっているから楽しみだ。

もっともっとお気に入りを紹介したい。Outsider Art Museum、つまり障がい当事者のアーティストたちが創り出した作品を展示する専門の美術館である。

アムステルダムの有名な美術館の一角(といっても結構でかい)にあり、外の敷地には別棟で作品を制作する工房もある。こだわりの強い人たちがこだわり抜ける環境がここにはあった。日本もこの規模になるといいね。僕はちゃんとした西洋絵画(なんちゃら派とか)に特に何も魅力を感じない人間なので「アウトサイダー」という言葉だけでなんだかワクワクしてしまうのです。


さて、ここからさらにヤバイっす。Technology& Societyというコンセプトで活動を続けるWAAGという団体。この団体の本拠地はアムスのど真ん中にある400年前(だっけ?)とかの建物をリノベした物件。外と中のギャップもヤバイがやってることもやばい。オープンなFAB LABとして機能する場所の他、繊維や医療に特化した研究開発基地が部屋ごとに分かれて存在している。

僕が一番気に入ったのはここの部屋。400年前(だっけ?)はこの部屋の足元に床はなく、下まで突き抜けていて、街で処刑された罪人の身体を解剖する様子が上から見下ろせるような作りになっていたという。ちょっとグロいけど、つまりは医学の発展に貢献しまくっていた場所なのだ!

さらに!やばいのあります!De School。日本でいう職業訓練校的な場所をリノベしてレストラン、カフェ、コワーキングスペース、クリエイティブスタジオとして機能している空間。そしてなんと地下にはクラブが!最高すぎる。仕事終わりに踊って帰る的な。こっちのクラブは金曜から月曜まで通しで営業しているそうな!疲れそうだな!月曜の仕事どうするねん!ここで出会ったVincentが日本にも何度も来ているアーティストでありキュレーターでナイスガイ。こんな場所で毎日働いてたらそりゃ新しい発想や出会いに繋がるわな!


ここからは急ぎ足に紹介します。
まずMaraさん!アムステルダムから電車で40分くらいの街でPT(理学療法士)として活動する彼女。オランダでの現場職員事情をインタビューしつつデジリハに対する貴重な意見を数々いただく。本当に参考になる!国によって制度や政策や職業文化が違うから、何もかもが違う!

その後、市街地に出てHappy Tostiというお洒落なレストランに。ここは障がい者の就労支援事業として運営されているわけですが、まーとにかく美味しい&楽しい&お洒落。マネージャーらしき人物のスタッフへの接し方もとにかくナチュラルでいいね。


夕方はJapan Cultural Exchangeという会社で日本の文化をオランダに紹介する展示会MONO JAPANの企画制作をされているエミコさんと会う。もう18年もこの国に住んでいるのだそうだ!もう現地人の感覚だ!次は2月の開催です。多分行くよ。てか何かコラボるよ!


*09/13(木)
10:40 アムステルダム中央駅 出発
12:32 デュイスブルク駅 到着
12:47 デュイスブルク駅 出発
13:08 ボーフム駅 到着

さー来たよ、ドイツ。まずはCyberdyne Care Roboticsへの訪問。もともと日本の会社だが、日本の医療保険・介護保険でなかなか承認を受けれず、ドイツに研究開発センターを作って、ドイツの保険制度から先に動かしちゃったというクレバーでクレイジーな会社です。ここのHALというマシンをどのように運用しているのかというのがデジリハ事業の今後の最大のヒントになったような気がしている。やっぱり先陣切ってやっている先輩方の行動や言動は本当に参考になるし、先を行く方々を見て僕はいつも唇を噛み締めてばかりです。


そしてドイツ・ベルリンに移動。ベルリンといえばテクノですね。クラブですね。そしてレコードショップですよね!めちゃめちゃ周りました!どんだけ周ったんだっていうくらい周りました!もうね、規模感が違う。全く違う。

とにかく店がでかい!整理整頓されている!物量が多い!視聴機タンテが多い!今回はレコードのディグがメインではないから(というかマジで気合い入れて日程確保しないと周りきれない)どのような品揃えなのかをチェックしたりしつつ、発売されたばかりのAphex Twinの新譜をジャケデザイン違いで同じものを購入。幸せです。見てよ、このPVをさ。もう気持ちいいんだか気持ち悪いんだか分からないよ。

結局うちの事業っていうのは全て医療福祉とエンターテインメントの掛け合わせ。世界中で渦巻くあらゆる音楽やアートに対して敏感に反応し続けないといけないし、この分野に関しての自分なりの研究を欠かすわけにはいかないのです。

そして今回、初の試みとしてドイツ・ベルリンから中継を結び、日本財団が主催するSOCIAL INNOVATION WEEKに遠隔通話で講演とパネルディスカッションに参加してみた。

僕は2025年の万博関連の枠で出演し、デジリハ事業部の野呂のサポートにより登壇もうまくいったわけだが、思った以上にスムーズだった。電波ってすげーな。インターネットの普及によってこんなにも世界が狭く感じられるのは本当に凄いことだと思うし、この時代を生きるからにはその技術をうまく活用しまくりながら自分のワークスタイル、ライフスタイルを確立させていきたいと思う。

講演後、向かったのがベルリンで開催されていたGermany-Japan Startupsという大使館やJETROが主催するイベント。

デジリハを国際的に発展させるためにJETROの方に簡単なプレゼンをさせていただいたところ非常に興味を持っていただき、来年2月に再会することを約束した。人と人とのご縁と熱量でしか仕事は前には進まないですね、本当に。


さて、ドイツと言えば、、、


ベルリンの壁によって西ドイツ、東ドイツに分かれていた時代を覚えていますか?崩壊したのは1989年。まだまだ最近の話です。

この旧東ドイツ側にクラブやレコード屋がわんさかあるわけですが、渡航前からチェックしていたのは一箇所のみ。それが伝説の「Berghain(ベルグハイン)」という謎に包まれたクラブの存在である。

このベルグハインに関しては様々な記事が書かれているのでしつこく書くのはやめるけど、簡単にいうと、、、

なんと、、、

僕らは、、、


入れた!!!! のです。

このバウンサー(用心棒)の横を通り抜けることができたのです。

いや怖すぎるだろ。

って思うかもしれないけど、

この記事を読んでもらえるとわかるけど、、、

この威厳が示すのはカルチャーへのリスペクトなんですね。

土曜の夜に1時間半くらい並んで入ったけど、噂に聞いていた通り、バウンサーによって入り口でどんどん人が弾かれていく。

まず人数を聞かれ、入れない人は手を横にスーッと振られ、「帰れ」という合図がされる。入れる人は首や指でクイっとドアの方に合図され、ボディチェックに進める。中に入ると持ち物は全て検査され、スマホのカメラには撮影できないようにステッカーが貼られる。ちなみに、凄い意外だったがIDチェックはない。しかも入場料も安い。そして酒も安い。

中の詳細を語るのはやめておく。

あそこは行かないと分からない。

今までの人生で踏み入ったことのないような空間だということだけは確かだ。

音響はFunction Oneのバカでかいのが四隅に積んである。爆音とはこのことだ。スピーカーの近くに行くと、ベースの厚みで息がしにくい。とんでもない音圧だ。

こんなところでパーティを主催してみたいものだ。

俺的に考えた入場できる方法は、、、
・服は黒とかシックな感じで行くべし
・観光客っぽい空気はゼロで行くべし
・入り口が近づいたら黙って気合いを入れるべし

最も大事なのはテクノやカルチャーへのリスペクトだと思った。服装や見た目も判断基準には入ると思うけど、その服装も含めた空気感というかスタイルを見て、カルチャーに対してリスペクトがあるのか、ないのかを見られている気がする。

長い時には3時間とか並ぶ列になる。割り込んでくるやつとか、泥酔して他人に迷惑かけてるやつとかは、自然と弾かれていく。ちゃんと見られているんですね、テクノの神様に。テクノゴッドはバウンサーの目を通してオーディエンスを見つめていたのです。

このベルグハインに入れたことは一生の思い出となると共に、自分の音楽とカルチャーに対する愛を一層増強させるきっかけになりました。ベルグハイン、ありがとう。怖いバウンサーの皆様、カルチャーを守ってくれて、ありがとう。また行きます。


そんなわけで最後はひたすらテクノとカルチャーに対する愛が滲み出る形になってしまいましたが、、、

2018年9月16日。僕は今、オーストリア・ウィーン国際空港のレストランに座っている。10日前と何が変わったかな。何も変わってないのかな。明確に何が変わったかは分からないけれど、間違いなく言えるのは、世界は広いということと、どんなに広くてもみんな同じ人間だということ。そして、国外に行くたびに思う。僕は日本と、日本に住む家族と仲間が大好きです。

今から帰ります。


NPO法人Ubdobe 代表理事:岡 勇樹


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