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読書メモ: コミュ障でも5分で増やせる超人脈術

 お待たせいたしました。ネットワーキング・チャレンジにて人脈本を読み進めてきましたが、真打の登場です。DaiGo氏の「コミュ障でも5分で増やせる超人脈術」であります。

 彼のYoutubeはいくつか見たことがあります。世間的には炎上事件で株を落としてしまったDaiGo氏ですが、書籍の方はどうなんでしょうか。

人脈を作る意味とは

 DaiGoさんは言います。人脈がもたらすメリット、それは「予約が取れないレストラン」の予約が取れるようになることだ!!

 早速プロローグからしびれました。私が仮説として考えていた物理的な(俗物的な)メリットのまさにそのひとつ。

 まあまあ、それはそれとして、本書の中で明確に人脈の効果として説明されているのがもうひとつあって、それは友達が多いやつほど健康であるということ(第4章)。

 主にこの2点が、人脈を広げる意味のようです。「健康になる」は想定していなかったなー。仮説をアップデートします。

参考になる点

 このようにのっけからメンタリズムを繰り出してくる本書ですが(で、メンタリズムって何?)、思いがけずさわやかというか、臭みの少ない作りにはなっていて、なんならほんのりいい香りがする、くらいのもんで、良いゴーストライターがついているのだなと感心しました。自前の編集チームなのでしょうか。

 とくに「良いかもしんない」と思ったのは、「スーパーコネクターと繋がれ」と「ネットワーキングは30人までにしろ」というふたつの教えです。

 タイトルの「コミュ障でも」の通り、そもそも自分がハブとなって人脈を広げていくのはしんどいから、いっぱい繋がっている人を狙って仲良くなればいいじゃん、という戦略。これは一面の真実であるかも知れず、しかももとから顔の広い人は人脈本など読みませんから、読者のターゲッティングと処方箋がとてもマッチしているように感じました。

 同様にネットワークのメンテナンスもコミュ障にとってはつらいということで、仲良くなるのは30人くらいにしとけ、そんなかに友達の多いやつを入れろというのは納得感がありますね。

楽しめる点

 いっぽうで、やれミミッキングだとか「誰とでも親密になれる36の質問」だとか、この手の自己啓発セミナー定番のトピックなんかも混じっていたりして、何処かで見たこの場面は遠い昔眺めてた(斉藤和義)という気分になります。

 また、人間関係がもたらす負の側面について触れた第5章で、「炎上」だとか「荒らし」だとか「ディスる人」についてコントロールする術を教えてくれる辺りを読むととても優しい気持ちになれますのでおすすめです。

 ちなみに最終章はなぜかエキストラステージだとしてカリスマになる方法が紹介され始め、いよいよ高額セミナーのランディングページにでも誘導されるのかなと思いましたがさすがにそれは気のせいでした。

参考文献が…

 本書では全体を通して繰り返し、〇〇大学の研究によると、とか〇〇教授の研究によるとみたいな感じで科学的なエビデンス風味の逸話が紹介されるのですけど(Youtubeを少し拝見する限り、これが彼のテンプレートなんですよね?)、んー、それってどういう実験? ほんとに再現性ある? 重要な前提条件無視してない?  みたいな疑問が湧いてくることが多いです。

クレアモント・マッケナ大学式「カリスマ性の向上トレーニング」です。研究チームは、企業役員に独自のトレーニングを指導し、8週間でカリスマ性を60%上昇させました。(第6章)

 クレアモント・マッケナ・カレッジーーええ、名門ですよ。それにしてもカリスマ性が60%上昇とはいったいどういうことでしょう? ゲームキャラクターにバフかけるみたいなノリですが。

 それはともかく一時が万事、それって誰のどういう研究なのか、という疑問に対する注釈はなく、妥当性を判断する術がないと思っていたら、あらら巻末に参考文献がありました。ありましたが……

 えーと、2-30くらいの参考文献がすべて英語で挙げられてるんですが、本文のなにがどこから引用されたものなのかを知る術はなく、参考文献の役割を果たしておりません。

 あと、このなかに挙げられているダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」なんかは私も読みましたし、とても良い一般向け心理学書ですが、日本語版があるやつはカッコつけないでそう書いてほしいものです。シェルドン・ソロモンも日本語版出てますよ。Tom Rathの"Vital Friends"という自己啓発本は2回書かれてますけど間違いかな。

  要するに本書が想定する読者は元の論文や実験にあたって理解を深めたり活用したりする可能性は0%であるということなのでしょう。まったくもって正しいマーケティングです

 ということで、わりと腹落ちするインサイトが出てきたり、Daigo氏のことを思って胸が熱くなったり、おいおいとツッコミができたり、と一冊で何度も美味しい本となっております!!

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