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読むだけでピアノが上手になる方法③ ショパン ワルツ編


ピアノに限らず、全ての楽器演奏においてアナリーゼ(音楽作品を形式や様式の観点から分析すること)は演奏するうえで大切です。

役者がその役に成りきるためにできるだけその役について調べるのと同じです。玉木宏は「のだめカンタービレ」を撮影した時アナリーゼも学んだと言っておりました。

ここにひと手間かけることでより深く、魅力的な演奏ができるようになるのですから試さないのは勿体ない!頭の片隅に入れて、意識するだけでも変わります。きっちり読んで演奏に生かしましょう。



ショパン ワルツ



●ワルツの起源とワルツの発達

ワルツの起源についてはフランス起源説とドイツ起源説があって、いろいろ論争があったようであるが、アルプス地方の農村舞踊レントラーから発したというドイツ起源説が、現在では一般的に通用している。

ドイツ語のWaltzerは「くるくる回転する」という意味であるが、この舞曲の名称は、既に1750年頃にはオーストリア、ボヘミア、バイエルン地方できかれたという。

しかし、このワルツは、はじめアルプス地方に古くからある三拍子のレントラーと同じように踊られて、レントラーとワルツの区別はほとんどなかった。

そこから滑らせるようなステップに重きをおかれたものがワルツとなり、古い形のレントラーから分かれたのである。

やがてワルツが室内で踊られるようになり、おまけに、床が磨かれるようになったことから、ますます滑らせるステップに重きがおかれテンポも早くなっていったのである。

ヨーロッパの宮廷舞踊の中心はフランス革命まではフランスであり、多くの舞踊のなかでもメヌエットが全盛をきわめていた。

しかし、フランス革命によるブルボン王朝の崩壊とともに、宮廷舞踊も急速に衰退し、舞踊の中心はパリ → ウィーンへと移った。

それまで全盛を極めていたメヌエットはステップが難しいうえに、テンポがゆっくりで、しかも貴族的で堅苦しい雰囲気があって、革命後の社会的風潮には合わなかった。

また、新しい社会風潮を反映して服装も変わり、とくに女性のドレスは床をひきずっていたのもからスカート丈も短く軽快になり、髪型も小さく、軽くなり、ワルツは人々が求めていたそのような風潮にハマった。


ワルツはメヌエットと同じ三拍子であったうえに、ずっと気楽に身体を動かして踊れるというのが、ウィーンで急速に人気を集めた。

やがて、パリをはじめとして他のヨーロッパの都市へ広まっていった。そしてワルツはメヌエットと異なり、あらゆる階級の人々に愛されるようになった。


ワルツと一口にいってもさまざまな種類がある。

19世紀のはじめ頃に踊られたもの

ウィンナ・ワルツ

フランス・ワルツ

時代が少し下がってから流行したもの

ロシア・ワルツ 

などがある。




●ワルツのリズム的特徴


ワルツのリズムは、3/4拍子で一拍目にアクセントがくるのが特徴的である。

一組の男女が抱き合った姿勢で一拍目を左足で大きく踏み出してから右足、左足と回転しならがステップを踏む。

同時に男女のセットが大きな円の上を六拍子で一周りするように踊られた。

つまり、二小節が一つの単位とするステップである。

ウィーンでは、頭や身体をスイングするように揺り動かすのが好まれこのことから、二拍目をやや早めに入ったりステップを二つにとるリズムが生まれテンポも速くなった。


パリではこうしたウィーン風のリズムとは違ってゆっくりな曲、中くらいの速さ、速いものがありこの三つを組み合わせて踊られた。

リズムも3/8拍子や、3/4拍子があった。

踊り方もウィーン風のすべらせるステップだけでなく速い曲では軽く飛んだり、跳ねたりした。




●ショパンのワルツ

ショパンのワルツは、全部3/4で書かれている。

ショパンのワルツは踊るためのものではなく、ショパン独自の様式で書かれた高度の芸術作品であるが、彼のワルツの基礎はウェーバーの影響を受けているといわれている。

ショパンはウィーンに滞在し、ウィンナ・ワルツの創始者であるランナーやシュトラウスのワルツを知っていたが、彼らの影響は受けなかったようである。

「自分はどうしてもワルツをウィーン風に弾けない」とショパンが言ったというが、ショパンの気質に合わなかったのであろう・・・。

シュトラウスのワルツがもともと庶民向けであったのに対して、ショパンのは芸術性の高さと、パリの社交界サロン向けに書いたものであったことから、ショパンのワルツは貴族的だと言われたもである。

一拍目を大きく踏み出すステップから、一拍目に和音の根音をおき、二、三拍目で和音の他の音を持ってくるという音型。とくに一拍目から二泊目に向かって大きく跳躍するという典型的なワルツの音方が生まれたのである。


これを単純に「強弱弱」と考えて弾くとつまらない演奏になる。

一拍目を大きく踏み出してスイングするように踊った雰囲気を考えて左手の音型を、一拍目にアクセントをつけてから浮き上がるように二、三拍目を軽く弾くようなリズム感を身につけるように練習すると、堅苦しい、野暮ったいリズムにならないと思う。

それまでのワルツとどこが違うのかを意識して弾くとよりショパンらしさが生まれるというものである。


ショパンのワルツは踊るために書かれたのではないが最初の二曲は実際に踊ることもできるような曲である。”華麗なる大円舞曲”という名前もついてる!

あきらかに、サロンうけを狙って書かれたのだろうからサロン風のワルツの雰囲気を理解することは、必要だと思う。


当時のサロン

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ショパンにとっては、ワルツとは世俗的な面を表現する一手段だった。彼が故国ポーランドを去ってパリにやって来たのは1831年。極度に優美で繊細でダンディーな青年。人を魅惑する神秘的なピアニスト。

パリのサロンはこの音楽家を暖かく迎え入れた。




●構成

初期のワルツの音楽は88小節あり、16小節で一つの部分が構成され後半の8小節は前半の8小節をそっくり繰り返す。

⑧+⑯+⑯+⑯+⑯+⑧+⑧=88小節

和音も主和音と属和音からなり非常に単純なものであった。

が、ショパンはちがう!!

・和声(ハーモニー)は豊かであり

・独特の旋律にあふれ

・構成の規模も大きく

・変化に富んだ芸術作品

構成はほぼ一緒だが、少し違う。

88小節であり、後半のフレーズが前半のフレーズの繰り返しという構成は、ほぼ、どの曲でもみられるが全く同じフレーズを使うのではなく多くは微妙に変化されている。

しかし

16小節でひとつの部分を構成していることは、はっきりと認識し次の16小節の部分とは、気分がどのように違っているかを見抜くことは大切である。

また

8小節のフレーズがいろいろに細分されている!

④+④とか

②+②とか

したがって

高音部の旋律の表情と関連してフレーズの組み立て方に注意すればアクセントのつけ方にも微妙な変化をつけることができる。

このように

構成を理解することにより必然的にどのように弾けばよいかが見えてきてさらに演奏が組み立てやすくなる。






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