創作大賞2023出品用の再投稿記事です「カナブン妃のヒマワリ」(ショートショート版)

この作品は以前「親子で楽しむ・親子を楽しむ読み聞かせ童話」という自己企画で書いた童話を今回の#創作大賞2023コンテストの(#ファンタジー小説部門)参加用に「ファンタジー・ショートショート作品」としての再投稿です。

まずは「応募規定」に則り「あらすじ」を記します~日本的な「命を慈しむ」心の尊さを、死んだカナブンの魂との交流を通して描いた小説です。
・・・以下本編・・・・・・・・・・・
夏の終わりの、とある朝、出勤の為、アパートの自室を出ると、
部屋の前で、カナブンが一匹死んでいた。数匹の蟻に、たかられている様子が哀れで、合掌して「安らかにね」と、片手間に、冥福を祈った。
 
熱心な仏教徒だった祖父から、道端の虫や、調理され、食卓に上った魚等でも、その命に敬意を払いなさいと、躾けられたので、
そうして部屋を後にし、出勤し、夜、仕事から帰ると、部屋の前で、一人の女性が立っていた。どこか、もの哀しげな様子が気になり
「どうしました?」と、声をかけると、女性は、今朝のカナブンの死骸を指し「どこかに、埋めて貰えません?」と言った。不思議な事を頼まれたので、詳しい事情を聞こうと、部屋へ招き、話を聞くと、彼女は、死んだカナブンの「魂」で、硬いコンクリートの上で、蟻達に啄まれながら死ぬのは嫌だと悲嘆していたところ、僕に声を掛けられたので、埋葬して欲しいと、すがったらしい。
 
僕は、明日は、休日なので、どこか見晴らしの良い丘か、山へ連れて行くと約束し、翌日一緒に、どこに埋めるか、探して廻ったが、「海辺は波が怖い」とか、「あの山は寂しそう」と、彼女の お気に召す場所は、なかなか見つからず、「どんな場所が、良いんだい?」と聞くと、
「こんなに優しくしてくれる、あなたの近くで、永眠出来たら嬉しいわ。」と言ったが、あいにく、僕は庭の無いアパート住みだから、それは無理だけど、 そんなふうに言われると、一日中一緒に居て、彼女に親しみを覚え始めていたので、その想いに応えたいと、それを叶える方法を考え、思い付いたので、
「なら、ホームセンター寄ってみよう。」と、帰宅前に寄り道を提案し、ホームセンターへ入ると、入り口で「まあ!綺麗」と、彼女が目を輝かせていたので、見ると出入口の園芸コーナーに、置いてあったヒマワリの種のパッケージのヒマワリの写真に感動を覚えた様子だったので、それも買い物カゴに入れ、 目的の商品を探すと、すぐ隣に並んだ、様々な植木鉢と、プラターの中から、適度なサイズの物を選び、また、腐葉土も選び、カゴに入れ、購入し
自室に帰り、さっそくプランターに腐葉土を敷き、カナブンの死骸をそこに載せた。
すると彼女は「うゎ~!ふわふわして気持ち良い!」と、嬉しそうだったので、同時に購入したヒマワリの種を出して、「今は、まだ、種を植える時期じゃないから、まずは、君を近いうち、そこに埋めてあげよう。そうすれば、種を植える春頃には、君は、すっかり土に還っているから、そこに、この種を植えれば、真夏に君は、こんな素敵な花になるんだよ。その花が散る時に、その種子を取り、次の春頃に、同じ鉢の同じ場所に植えてあげるね。そうやって、夏が来るたび、また逢おうぜ。」と、言うと、彼女は嬉しそうに笑った。
 
次の夏、その鉢に育ったヒマワリは、茎の太い、大輪の鮮やかな花を咲かせた。
僕はその姿を写した画像をSNSで、公開すると、たちまち「生命力に溢れた鮮やか過ぎるヒマワリ」と評判を呼び、その種を譲って欲しいと、問合せが殺到し、僕はそのつど、種を送り、かつて、命を終えた彼女が世界中へ拡散するのを、どこか誇らしく思い、欲しがってくれる人に喜んで送り、世界へと飛び立つ彼女を見送りながら、夏の終わりに蟻にたかられながら終えた、小さな命・小さな魂に、優しくしてあげて良かったと、僕は思った。   おしまい

#創作大賞2023 #ファンタジー小説部門

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