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観光×DX:第1回優勝社 Strolyインタビュー

UPGRADE with TOKYO 第1回 テーマ
「VR、AR、5G、ビックデータ、AI等の最先端技術を活用して行う取り組み」

優勝社:株式会社Strolyのご紹介

株式会社Strolyは、製品の企画・開発・運営や位置・空間技術に関するコンサルティングも行なっているスタートアップです。2019年12月に行われたUPGRADE with TOKYO 第1回では、「Stroll(散歩)」と「Story(物語)」を掛け合わせた会社名と同じ名前が付けられた、イラスト地図のオンラインプラットフォーム「Stroly」の活用をご提案いただき優勝社に選ばれました。

ピッチに登壇されてから2年が経過した現在、東京都との協働の進捗について、株式会社Stroly代表取締役社長 高橋 真知さんにお話を伺いました。

UPGRADE with TOKYO参加の経緯と期待感

---UPGRADE with TOKYOへの参加の経緯を教えてください。

東京都さんが女性ベンチャーを対象に行なっている短期集中型育成プログラム「APT Women(アプト ウィメン)」を受講していたのですが、その時にUPGRADE with TOKYOが初めて開催されることを教えていただきました。国内や海外で様々なピッチイベントに参加させていただく中で、UPGRADE with TOKYOは初回ということでまだ評判も前例もないので気軽に応募させていただきました。

---参加への期待感はありましたか。

もし東京都さんとの協働が実現した暁に、みなさんがStrolyを見た時に「東京都と同じことがやりたい」と広がりが生まれるのではないかと期待していました。

いよいよ始まった東京都との協働事業
その時の様子は?

---東京都とのキックオフミーティングについてお聞かせください。

UPGRADE with TOKYOでピッチをさせていただいたのがコロナ禍直前の2019年12月で、キックオフミーティングは年が明けてからでした。都庁の中のミーティングルームでお互いのメンバー紹介やオリンピック・パラリンピック前後のインバウンド観光について話し合いました。

---その後、コロナ禍により状況が変わったと思いますが、その時の様子は?

コロナ禍の収束が見えない中、Withコロナを視野に入れて自分たちのサービスの進展を図りました。その間、東京都さんとインバウンド観光ではないところでどういったことができるのか話し合いを重ね、2021年の春には次年度に向けての企画を詰めていきました。もともとStrolyは“旅ナカ”での使用がメインでしたが、外出を控える中では「コロナ禍が落ち着く頃に出かけよう」と考える人も多く、旅行先を検討するなどいわゆる“旅マエ”の状態が続くのではないかという話になりました。そこで“旅マエ”と“旅ナカ”、“旅アト”も含めてなにができるかを考え、ひとつの形となったのが新宿エリアでの実証実験になります。

新宿エリアとしてスタートした実証実験のポイント

---新宿エリアでの実証実験となった背景は?

東京都さんから新宿エリアでの実験は波及効果が期待できるというお話を伺い、都庁もあるエリアということから決めました。インバウンドが戻ってくることを想定して海外から見た日本のイメージをモチーフにマップも実験用に描き下ろし、車や人、天気など細部に至るまで雰囲気にこだわっています。

---実証実験で協働のポイントはどこでしょう。

東京都さんと協働でいろいろなコンテンツを実装しています。例えば今日このエリアで開催されているイベント一覧。こちらは今回、新しい機能として東京都さんと一緒にリリースしました。その他にも歴史をモチーフとしたマップでは博物館や史跡などが分かるようになっていて、歴史探訪を楽しむことができます。また一緒にログインしている人とおしゃべりが楽しめるチャット機能など、新宿エリアを楽しくお散歩できるような設計になっています。リリース前には都の担当者さんとお互い全然違う場所からログインして、GPSを頼りに出会えるかテストもしました。楽しかったですよ(笑)。

これまでを振り返り、これからの展望を考える

---キックオフミーティングから現在まで、協働を振り返ってみていかがでしたか。

やはりコロナ禍がどんどん深刻になる中で、東京都さんとしても外出を勧められる状況ではなくなったことが大きかったと思います。さらに言うと、当初は観光=インバウンドといった感じだったので、インバウンド向けの話し合いを進めていたのですが、オリンピック・パラリンピック延期の話が持ち上がり始め、新たな視点での企画を練る時間が必要になり、キックオフミーティングからの半年から1年間は、企画を固める期間になりましたね。その企画が固まってきたのはオリンピック・パラリンピック延期が正式に決定した後でした。

2020年の秋にコロナ禍が一旦落ち着きを見せ、Go To キャンペーンが始まるなど良い兆候もありましたが、また再び感染者数が増えたり。サービスのリリース時期や広報は、コロナの波に右往左往させられた感じです。

ただ一方で、コロナ禍に対応することで進化したこともありました。もともとStrolyは情報発信のツールでしたが、もっと地域経済にコミットするサービスにしなければいけないことに気づきましたし、逆境ではありましたがアイデアを出しやすい環境を作っていただけたので、企画を練る時間ができたことは良い面もあったと感じています

---まだまだ協働は続くと思いますが、今後の展望を教えてください。

今年度は新宿エリアの実証実験のデータを分析して、次年度はその結果をベースに得た課題をどう解決していくかがポイントになります。そのための機能改善などを進めていきたいですね。そして新宿エリアから東京都の他のエリアにもStrolyを広げていければと考えています。

より良い結果を得るために
今後のUPGRADE with TOKYOと協働について

---最後に、株式会社Strolyさんから見て、UPGRADE with TOKYOや東京都との協働について、改善点などがありましたら教えてください。

東京都さんに限らず、自治体は年度で業務が進んでいくイメージがあり、一般企業とのお仕事のように「これが終わったら次はこれ!」という感じにはなりませんよね。でもそれは逆に「着実にやっていきましょう!」ということだと思っています。

我々とご一緒してくださっている東京都の担当者さんは、新しいアイデアに対しても理解をいただくのが早くて、スピード感を持ってお仕事を進められた印象です。その都度の場面で意見の相違のようなものはもちろんありましたが、ミーティングで逐一擦り合わせもさせていただいたので。

東京都さんとの協働は、本来であればなかなか実現が難しいと思いますが、UPGRADE with TOKYOを活用することでグッとハードルが下がるので、とても良い機会だと感じています。しかし我々スタートアップの中でも知らない人が、まだまだたくさんいらっしゃいます。このインタビューがUPGRADE with TOKYOを身近に感じていただくような発信になると良いなと思っています。

※令和3年4月1日から令和6年3月31日まで株式会社Strolyは政策目的随意契約に係る認定を受け、協働を進めています。
認定を受けると、認定期間中、東京都の機関が競争入札によらない随意契約で認定製品・サービスを購入・使用することができます。

UPGRADE with TOKYO 第1回 優勝時の記念撮影の様子

株式会社Strolyとの協働について
東京都観光部の担当者へインタビュー

いよいよはじまったUPGRADE with TOKYOの優勝社と東京都との協働。前例がない中で優勝社とどのような形で協働が進められたのか、東京都観光部の担当者にも話を聞きました。

---UPGRADE with TOKYOで初めての協働となりましたが、前例のない中で不安はありましたか。また、協働開始当初の優勝社への印象もお聞かせください。

都政課題について、東京都とスタートアップとの間で、目指す方向性の共有が不十分であった場合、事業実施が難しくなるかもしれないという不安が、当初にはありました。しかし実際に協働が始まり、ミーティングで意見の擦り合わせや調整を重ねることで、その不安は次第に解消されていきました。
また、株式会社Strolyさんは、すでに他の自治体でも導入実績もあり、連携にはとても前向きで積極的なスタートアップという印象を持っていました。

---一方で、この協働にかける期待は、どのようなものだったのでしょう。

今回の協働では、観光デジタルマップによるストレスフリー観光の実現、当該マップの利用状況のデータ公開による都内観光関連事業者へのマーケティング支援など、都政課題の解決に寄与することに期待していました。

---進捗状況や現状の成果を教えてください。

コロナ禍での協働ということで、当初予定していたスケジュールから多少遅れての実施、かつ限定的な実施内容にはなりましたが、新宿エリアの観光デジタルマップを2021年10月に公開するに公開することができ、ストレスフリー観光の一助になったと考えています。この観光デジタルマップの利用状況のデータも近日中に公開できる見込みとなっています。

---協働を進める中で、苦労した点はありましたか。

行政とスタートアップとの間では、どうしても事業実施の仕方やスケジュール感などに差異が生じる場合がありました。ミーティングを通しお互いに細かな意識合わせを適宜行うことで、デジタルマップの公開や取得データの整理等を滞りなく実施することができました。

---今回の協働は以降のUPGRADE with TOKYOにとって好例になったかと思いますが、今後への期待や課題がありましたら教えてください。

今後、東京都とスタートアップがより協働を進めていくためには、スタートアップの技術をより活用できるよう都政課題の適切な掘り起こしが必要だと考えています。また同時に、東京都として協働におけるサポートを円滑に行うことが、良い結果をもたらすと思います。
スタートアップの持つ自治体にはない経験や知識、柔軟な視点などを活用することで、より効果的に都政課題の解決につながることに期待しています。

ポジティブな姿勢がサービスを進化
観光デジタルマップで楽しい旅の思い出を

外出自粛要請や緊急事態宣言の発出、さらにはオリンピック・パラリンピック延期の決定など、株式会社Strolyと東京都観光部の協働は状況が刻々と変わり、とても難しいものだったと思います。
しかし今回、高橋さんにお話をお伺いして分かったことは、いつでも前向きな姿勢を忘れていないこと。世界的に蔓延した新型コロナウィルスに対して、Withコロナへのシフトチェンジ、アフターコロナへの見通しなど東京都と密に連携を取りながら、議論を重ね、株式会社Strolyの臨機応変な対応力により、ご提案時からさらに進化した形でのアウトプットが実現したことは、協働というワークスタイルの中で何が大切かを示してくれたのではないかと思います。
今後、観光デジタルマップが様々なシーンでみなさんを楽しませてくれることに期待します。

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