水産業×AI:第9回優勝社 オーシャンアイズインタビュー
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水産業×AI:第9回優勝社 オーシャンアイズインタビュー

UPGRADE with TOKYO(東京都 公式)

UPGRADE with TOKYO 第9回 テーマ
「東京の水産業、林業を最新テクノロジーでアップデート」

優勝社:株式会社オーシャンアイズのご紹介

株式会社オーシャンアイズは、表面海水温や潮流を分析して漁場決定を情報で支援するサービス「漁場ナビ」を提供しているスタートアップです。”海の天気予報”とも言えるこのサービス。その基となる養殖場や定置網漁、自治体・水産試験場などのニーズに合わせカスタマイズされた海況予測を提供する「SEAoME」の活用をご提案いただき優勝社に選ばれ、現在は東京都農林水産部と協働しています。

今回は株式会社オーシャンアイズ代表取締役 田中 裕介さんに、協働の進捗を中心にお話をお伺いしました。

日々の事業とテーマが合致
ありのままでUPGRADE with TOKYOに参加

---UPGRADE with TOKYOにはどのような経緯でご参加されましたか。

私たちは海況を予測して”海の天気予報”とも言える「漁場ナビ」を、自治体や一般の水産事業者の方々に提供していますが、UPGRADE with TOKYOという東京都の枠組みの中でピッチをさせてもらうことで、自分たちがやりたいことをもう少し進められたらという思いで参加させていただきました。

---参加するにあたり、なにかご苦労はありましたか。

いえ、弊社の製品をそのまま打ち出すピッチだったので、特に苦労はありませんでした。もちろん「こういうことを伝えた方がいいのではないか」、「ここは強調した方がいいのではないか」というところでの調整はありましたが、資料としてはあまりカスタマイズはせず、ありのままをご提案させていただきました。

私たちは日頃から水産業に向かって事業を進めているので、テーマがぴったりとハマっていたという感じです。

東京都との協働はどう進んでいくのか
示された課題とその進捗状況

---東京都との協働は、どのように進んでいますか。

東京都さんとは「こういうことをやりたいね」という話を一緒にさせていただいて、それに対して「こうすればできますよ」と提案でお返しするという感じで進めています。その打ち合わせを繰り返して、昨年度は漁場環境予測システムを形にしました。

---実際にどのような点が課題として挙げられていましたか。

伊豆・小笠原諸島といった島嶼部の農林水産業が課題のひとつとしてありました。私たちは伊豆諸島の水産業でいうと、キンメダイを魚種としてのメインターゲットとしていますが、東京都さんは広い視野で課題を捉えていて、もっといろいろな魚種に広げていきたい意向があります。それを実現するためにも、まずは漁師さんも多いキンメダイを中心として、東京都向けにカスタマイズした漁場ナビで情報提供をしっかり行っていこうと進行しています。

---東京都と協働することで得られるメリットはありますか。

私たちが”海の天気予報”として提供している漁場ナビは、「SEAoME」という共通の基盤でいろいろなエリアに展開できます。島嶼部をはじめ、海況が異なる様々な海域を持つ東京都さんとの協働により予測精度を高め、そのことで得られた知見は結果として他の自治体の海域にも活用することができます。さらに他の自治体の海域で得た知見を東京都にフィードバックもできるので、メリットとしてはとても大きなものだと感じています。

さらに開発者目線で言うと、様々な海域を見ることができるのはとても面白いです。伊豆・小笠原諸島は黒潮が横切っている海域なので、日本のみならず太平洋全体を左右するような大きな海流を直に扱えるというのは、開発という意味で大変興味深いところです。

---これまで苦労したことなどありましたら教えてください。

このコロナ禍で、現地に訪れていないことがもどかしい状況です。もちろん東京都さんからの情報共有はいただいて、方向性の大きな変更はありませんでしたが、やはり水産業は現場があってのことなので、現地を視察できないのはなかなか厳しいところではあります。特に島嶼部に関しては、他の海域とは異なる点もありますので、ぜひ現地の生の声は取り入れたいところですよね。

---今回の協働で反響などはありましたか。

やはり神奈川や千葉といった近隣の自治体の方は見ていらっしゃるなと思いました。千葉では別のプロジェクトが進んでいるのですが、お話のきっかけとして東京都さんとの協働のご紹介は有効でした。東京のキンメダイは関東圏でとても有名なので、その魚種で実績を積み上げているというのは波及効果が高く、私たちの宣伝のひとつとして大きな効果を発揮していると感じています。

もともと私たちは、漁場ナビを至るところで活用していただきたいという思いがありますので、今回の伊豆・小笠原諸島の実績を礎に、日本全国のより精度の高い海況情報提供を目指していきたいですね。

---協働に関して、これからの展望を教えてください。

私たちの協働の目的は、東京都農林水産部が抱えている様々な課題を解決できるシステム開発です。そのために一緒に考えながら作り上げていく発展途上にあると考えています。

東京都さんは「こういうことをしたい」というものを明確に持っていらっしゃいます。いまはキンメダイをメインターゲットにしていますが、お話の中ではカツオやカジキなども挙がっています。水深400〜600mに生息するキンメダイに対して、カツオやカジキはおよそ数十mにいる魚なので、漁獲するためには使う情報は全然違いますが、今後はキンメダイ以外の漁場に対する精度の高い情報提供も行っていくことになると思っています。

成功事例の提示とテーマの明確化
UPGRADE with TOKYOのさらなる発展

---最後に、今回優勝社に選ばれ東京都との協働を経験したスタートアップとして、UPGRADE with TOKYOの改善点やご要望などがありましたら教えてください。

私たちは大学や研究機関出身者なので、数カ月に1回くらいのペースでお誘いをいただいて、定期的にいろいろな場所での発表を行っています。その中で自治体ともお話しする機会がありますので、自治体の抱えている課題の感覚がつかみやすかったのだと思います。UPGRADE with TOKYOの参加募集でテーマを示すとき、実際にはどのような課題があるのか、もう少し具体的に触れられると、そのテーマに合わせた提案がしやすくなるのではないでしょうか。私たちが参加した第9回は農林水産業に絞ったテーマでとても分かりやすいものでした。農林水産業だけで参加者を募るというのは、さすが自治体ならではだと思います。

そしてもうひとつ。まさにこういう場が必要だと感じています。「UPGRADE with TOKYOで優勝しました!」だけではなく、その先にどのような協働につながるのか、それによってどんなメリットがもたらされるのか、ピッチの結果をいかに活用できるのか、ということが明確に分かってくるとどんどん参加者も増えていくのではないかと思っています。

※令和3年4月1日から令和6年3月31日まで株式会社オーシャンアイズは政策目的随意契約に係る認定を受け、協働を進めています。
認定を受けると、認定期間中、東京都の機関が競争入札によらない随意契約で認定製品・サービスを購入・使用することができます。

株式会社オーシャンアイズとの協働について
東京都農林水産部の担当者へインタビュー

東京の農林水産業の課題にアプローチしたUPGRADE with TOKYO第9回。多岐にわたる課題を抱える中で優勝者が選ばれたポイントや協働の進捗について、東京都農林水産部の担当者にも話を聞きました。

---UPGRADE with TOKYO第9回では様々な提案がありました。その中で優勝社が選ばれたポイントを教えてください。

東京都では「稼ぐ農林水産業」の実現を目指して、DXの推進によるスマート農林水産業を目指すプロジェクトを立ち上げました。いま水産業は魚の価格が伸び悩む中、燃油およびその派生資材の高騰により経費が増大傾向にあり、漁家経営が脅かされるという大きな課題を抱えています。その課題解決策のひとつとして、漁場の選定や出漁判断時に活用され、漁業者の効率的な操業の実現、ひいては漁業経費の削減に大きく貢献する「良質な漁場環境予測情報の発信」に大きな期待を寄せていました。

これら情報発信に向けたシステムの開発については、かねてから検討を進めていたものの、プロである漁業者が利用するためには、いかに「高精度」で「実用性の高い」システムが構築できるかが重要でした。その点において、株式会社オーシャンアイズさんは、水産業のスマート化に向けた革新的な事業展開を行っていることが魅力的だと感じました。

---協働プロジェクトの進捗状況や現在の成果について教えてください。

協働にあたり、我々が思い描いていたシステム開発と発信方法について話し合いを重ねたところ、株式会社オーシャンアイズさんが有している高度な開発技術とそれを裏付ける特許権などにより、開発の実現性が極めて高いということが分かりました。そのため、2021年6月に「漁場環境予測システム開発業務」を受託頂き、12月には基本システムの開発が概ね完成したところです。2022年度はスマホなどの携帯端末での操作を想定したアプリ化を図るべく、引き続きオーシャンアイズさんのお力をお借りしていければと思っています。

---協働を行ってよかった点をお聞かせください。

今回の協働により開発した「漁場環境予測システム」は、伊豆諸島海域における良質な海況情報発信ツールとして機能することが想定されています。これまでは構想に過ぎなかった課題が、今回のオーシャンアイズさんとの協働という機会により、劇的な進展が図られたことは、驚きとともに大変喜ばしいことだと感じています。

今後は、都政における水産業振興策の一つとしてしっかりとこのシステムを機能させることに加え、東京都と民間企業の協働の優良事例として次の模範となれるよう、引き続き協働を推進していきたいと思います。

---スタートアップに対する印象の変化があればお聞かせください。

UPGRADE with TOKYOにて発表・受賞された「漁場ナビ」は、「海の天気予報」という概念にとらわれず、日々刻々と変化する海況を踏まえた「漁場の予測」まで想定したシステムであり、東京都として求めていた「高精度の海況予測」を十分満たす仕様であり、かつ拡張性の高さが伺えます。本システムの応用のもと、都の漁業実態を踏まえた「東京都仕様の予測システム」として機能することを期待しています。

今回の協働に至るきっかけがUPGRADE with TOKYOであり、その後の展開は全く未知数でしたが、本イベントを通じ、優れたシステムとその開発陣に巡り会えたことは大変幸運でありました。感謝しております。

---今後協働事例を増やしていくためにはどうするのが良いと思いますか。

日頃から業務を進める中で、各部署とも何らかの課題や問題を抱えてあろうかと思います。ましてや、その対策自体が従来の方法では到底解決できないことも多々あるかと思います。今回協働に至った案件は、まさにこちらに当てはまる案件でした。

今回の経験を踏まえ、今後のイベントの開催にあたり、まずは各部署でどのような課題・問題があるのかの掘り起こしに向けた仕組づくり(公募的なもの)を行い、そこで発出した課題に基づき、最終的な「テーマ」の発案に向けたきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

---今後の東京都とスタートアップの協働についての期待感やご希望があればお聞かせください。

水産業を取り巻く環境は、地球規模の温暖化や燃油の高騰等、年をまたぐごとに厳しさを増しています。日頃から業務を進める中で、これら問題を抱えつつも、いかに漁業活動を維持・発展させるかを模索しているところです。

直近の情勢下においても懸念される問題となっているのが、海藻の消失による「海の砂漠化」です。これまでにも様々な回復策が講じられてきましたが、効率的かつ確実に回復する策は、現段階では皆無ともいえます。ただ、こうした見解はあくまでも水産業界の常識に基づく判断です。今回の協働事例のような画期的な打開策が、もしかしたらあるのではないか?といった期待もありますので、引き続きスタートアップの画期的なサービスに注目していきたいです。

UPGRADE with TOKYOが示す
東京都とスタートアップの協働の好例に

東京都が描く「稼ぐ農林水産業」を実現するための具体的な手法のひとつとして、とても期待値の高い中で始まった協働。その中で改めて株式会社オーシャンアイズが示した技術力や実行力により、今後も協働が持続することは、UPGRADE with TOKYOにとって明るい未来を提示する好例になったのではないかと思います。

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