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米ワシントンで国際宗教自由(IRF)サミット2024 〜元米政府高官らが日本政府の家庭連合への解散命令請求に懸念〜

世界における宗教の自由を促進する「国際宗教自由(IRF)サミット2024」が米首都ワシントンのヒルトンホテルで1月30日から2日間の日程で行われ、政府高官や政治家、宗教指導者、人権活動家など41カ国から約1500人が参加した。米NGOフリーダムハウスなどの人権団体やインターネット交流サイト(SNS)最大手の米メタ(旧フェイスブック)のほか、UPFやワシントン・タイムズ財団が協賛して開催された。


世界各地で起きている宗教迫害が議論される中、昨年10月に日本政府が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し解散命令請求を行った問題も取り上げられ、元米政府高官らから懸念や批判の声が相次いだ。
IRFサミットは2021年に初めて開催され、政府関係者や議員の支持を得ながら、世界における信教の自由を保護、促進するための運動を展開してきた。UPFとワシントン・タイムズ財団は、昨年から同サミットの協賛団体として名を連ねている。
今年は、30以上の宗派的背景を持つ約170人が講演。中国・新疆ウイグル自治区におけるウイグル族らイスラム教少数派への弾圧やイスラム過激派によるキリスト教徒への殺害が繰り返されているナイジェリアの問題を含め、世界各地の宗教迫害問題が取り上げられた。

ジョンソン米下院議長が演説

初日となる1月30日にはトランプ前米政権で国際宗教自由大使を務めたサム・ブラウンバック同サミット共同議長が登壇し、「信教の自由は人権の根幹をなすものであり、他の人権を繁栄させる土台だ」と強調した。その上で、過去20年間において世界各国で権威主義体制が拡大したことで、信教の自由は衰退の危機に瀕(ひん)しているとし、「われわれはより効果的な方法でこれに対抗しなければならない」と訴えた。
バイデン政権のラシャド・フセイン国際宗教自由大使は、「宗教の自由を保護する国や社会は安全で繁栄する可能性が高く、保護しない国は不安定になりがちなことは、非常に明らかだ」と述べ、信教の自由と安全保障が密接に関連していると強調した。その上で「信教の自由は、われわれの外交政策にとって不可欠なものであり、世界各地でその証拠を見ることができる」と主張した。
翌31日には、キリスト教福音派としても知られる共和党のマイク・ジョンソン米下院議長が演説し、北朝鮮やニカラグア、ナイジェリアなどで起きている宗教弾圧を批判した。とりわけ中国については「チベット仏教徒や法輪功学習者は強制労働収容所に入れられ、中国共産党によって臓器を摘出されている。また、新疆ウイグル自治区でイスラム教少数派に対し強制不妊手術や強制収容、再教育というジェノサイド(大量虐殺)が行われている」と厳しく非難した。

特定の宗教団体を排除する日本政府
飲酒運転しているドライバーのよう

UPFとワシントン・タイムズ財団が協賛する31日の昼食会では、日本政府による家庭連合への解散命令請求についてパネルディスカッションが行われた。そこでは日本政府の対応が信教の自由を脅かしているとして、改善を求める必要性が議論された。
同サミットの共同議長で、米政府諮問機関「米国際宗教自由委員会(USCIRF)」の委員長を務めたカトリーナ・ラントス・スウェット氏は、日本政府による家庭連合への対応について「見過ごすことができない」との認識を示した。その上で「『友人であるなら、友人に酔った状態で運転させない』という言葉があるが、日本はまさに酔った状態で車に乗ろうとしている状況だ」とし、飲酒運転をしようとしているドライバーに例え、日本政府に働きかける必要性を強調した。
さらに、「特定の信仰共同体を標的にしたり、集団罰を与えたりすることは容認できない」と指摘。また、政府やメディアがその力を用いて、「特定の宗教団体を排除し、格好の攻撃対象にするべきではない」と訴えた。
欧州連合(EU)で初代信教の自由特使を務めたヤン・フィゲル元スロバキア副首相は、「今、日本は岐路に立たされている」と指摘。信教の自由は「すべての人権についてのリトマス試験紙だ」とし、もしこれが尊重されなければ、言論の自由、集会・結社の自由なども抑圧されることになると警告した。
旧チェコスロバキアの反宗教的な共産主義政権下で半生を過ごした同氏は、「共産主義は長年にわたって信教の自由への強烈な憎悪を示してきた」と指摘。日本においては共産党や左派弁護士たちが、家庭連合への解散を求める動きを「半世紀にわたって繰り返してきた」とし、今では「非常に危険な段階に達している」と危機感を示した。
イタリアの宗教社会学者で「新宗教研究センター(CESNUR)」代表のマッシモ・イントロヴィニエ氏は、「もし家庭連合が解散になれば、単に課税免除がなくなるだけではない。礼拝する場所や資産などすべてを失う。つまり死刑宣告だ」と強調した。
また「これは家庭連合だけの問題ではない。日本ではすべての宗教団体に対し、献金や子供への信仰の継承を制限する法律がすでに成立している」と日本の動きを問題視。さらに「すでにエホバの証人も標的になっている」と懸念を示した。
オバマ元米政権で国際宗教自由大使を務めたスーザン・ジョンソン・クック氏は、日本の状況が「無視できない段階に達している」と指摘。その上で「信教の自由というのは、あらゆる宗派の人たちが友人ということだ」と述べ、宗派を超えて信教の自由擁護のために声を上げる必要性を説いた。
米ブリガム・ヤング大学法科大学院のコール・ダーラム名誉教授は、宗教は個人だけでなく、社会全体にとっても有益だと述べた。仮に信者個人が過ちを犯せば、その個人は罰せられるべきだが、「その宗教団体自体が解散させられたり、活動できなくさせられたりするべきではない」と主張した。

vol62 世界思想5月号『特別レポート』から


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