ノスタルジーは突然に
小説を読んでいたら、文中にこんなセリフが出てきた。
うーん、同世代!
完全に同世代だこれ!
このセリフは加藤実秋の「モップガール」という小説の中で、主人公が職場の先輩と食事中に雑談するシーンで出たものである。
主人公は時代劇が好きな22歳の女性で、これは大の時代劇ファンだった祖父母の影響を受けている。
彼女は月曜日の夜は祖父母と水戸黄門を見ていたけど、同世代の友だちは世界まる見えやHEY!HEY!HEY!を見てたから話が合わなかった、という流れだ。そしてこの小説は初出が2006年なので、小説の舞台が同じ2006年前後と仮定すると、この主人公と自分は同世代なのである。
確かに我々の世代は月曜の夜といえばHEY!HEY!HEY!かまる見えだった。
我が家も祖父母と同居しており、祖父が水戸黄門を見ていたが自分はそこで離脱して二階の部屋にあるもう一台のテレビでまる見えを見ていた。
自分の周囲だとHEY!HEY!HEY!が多かった気がするけど、まあとにかく水戸黄門を選ぶのはかなりの渋チョイスだ。相当祖父母との仲が良かったのだろう。おそらく水戸黄門の前は東京フレンドパークを見ていたに違いない。ハイパーホッケーを見ながら「ホンジャマカつえーなー」等と話していたに違いない。 ところで、個人的に面白いなと思ったのが、自分がこの小説を古本屋で買ったので、小説の出た時期=話の舞台となる年代を知らずに(気にせずに)読み進めていた結果、上記のセリフがめちゃくちゃ不意打ちで刺さったことである。
舞台が平成初期より前だと読んでいくうちになんとなく自分の生きてきたより前の時代の話だな、というのを察する事ができるのだけれど、平成中期以降だとこれが意外とわからない。
作中にも携帯電話やインターネットカフェが出てくるので、なんとなく自分が今生きてる時代に勝手に脳内変換してしまっていたのだ。
そんな中でいきなりHEY!HEY!HEY!とか出てきたので、突然タイムスリップしたかのようなノスタルジーに襲われてしまうという面白い経験ができたのであった。
ちなみに「モップガール」は特殊清掃(いわゆる「事故物件」の後始末など)をメインとする掃除会社に就職した主人公が現場で死者の残留思念的なものを感じとれる能力に目覚め、個性的な同僚達と事件・事故の裏に潜む謎を解き明かしていく…というのがメインストーリーなので、ジャンルとしてはお仕事小説の要素を持つミステリー、サスペンスといった感じの話です。興味の湧いた方はぜひ。
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