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【禍話リライト】追ってくるチラシ

A君が通う高校までの通学路に、広い公園があった。
公園の周りは、子供のいる家庭が多く住むマンションが建ち並ぶ住宅街である。
公園内の遊具や砂場、ベンチやトイレなどの設備は非常に綺麗で、一部囲いが設置されていてボール遊びが出来るようにもなっている。
だがいつその公園の前を通っても遊ぶ子供を見た事はないし、人がいたとしても散歩休憩でベンチに座る老人くらいだった。

ある日の下校時に友人とその公園の前を通りかかった。
もちろん公園には誰もいない。
高校生であるが、A君は友人とふざけて滑り台で遊ぶ事にした。
梯子を登って頂上が見えるとともに、一枚の紙も視界に入ってくる。
つい先程そこに置いたような綺麗な紙だ。
拾い上げて見てみると、それは雑貨店のチラシのようだった。

店の商品とその値段、店の電話番号、そして店主と思しき笑顔の男性の比率のおかしな写真。
その下に大きく「お待ちしております」と書かれている。
慣れないパソコンで、初めて自分で作ったと思えるような出来のチラシである。

なんでこんなところに、とチラシを眺めていると後ろから登ってきた友人が「なになに?」と覗いてくる。

「あれ、この店もう潰れてるよ」
友人曰く、半年ほど前には店仕舞いをしているという。

「◯◯商店街にあってさ、俺は中に入ったことないけど、入り口で店長がいらっしゃいませ、いらっしゃいませってでけえ声で言ってたんだけどさ。
 この人病気しちゃって、それから退院するまで店閉めてたんだけど、なんかそのまま潰れちゃったらしいよ」

わざわざ下手くそなりにチラシ作ったのに、潰れちゃったんだ。
でもこんなとこにあったところでな、とくしゃくしゃに丸めて投げ捨ててしまった。

しばらく年甲斐もなく滑り台で遊んだ後、二人はベンチに移った。
座ろうと視線をベンチに向けると、小さく折り畳まれた紙が挟み込まれている。
まさかと思って広げてみれば、滑り台に置かれていたのと同じチラシだった。
やはり外に放置されているのに、紙は妙に綺麗なままである。下手したらついさっき折って挟んだのかと思えるほどである。

なんとも言えない気持ち悪さを覚えて、滑り台の上から投げ捨てたチラシと一緒にゴミ箱へ放り込んだ。
投入口からちらりと見えた中には、同じような印刷をされたと思われる紙屑がいくつも入っていたという。

気味が悪くなり、公園から逃げ出しそのままその日は帰路に着いた。

翌日の登校時に昨日公園であった事を別の友人達に話をしていると、興味を持った友人が近くだからと、一緒に覗きに行く事になった。

砂場に綺麗に畳まれた紙が刺さっている。
引き抜いて広げてみると例のチラシだったのだが、店長の写真が昨日見たそれより、明らかに大きく印刷されていた。

「誰か近くで監視してて、こんな悪戯してんじゃねえの?」

確かに周囲はマンションが立ち並んでいるから、公園を監視するのは容易である。
おかしな奴が勝手に店のチラシを真似て作って、公園の至る所にばら撒いて、面白くもない悪戯をしているのかもしれない。
しかし店長の写真はどこから手に入れたのか。

もやもやと不安が残り、授業中も思い起こす事が多かったので、帰りは少し遠回りする事を決めた。

A君の自宅はマンションの一階にある。
目隠しはあるが、今日はまだ洗濯物が干したままになっているのがシルエットでわかった。
帰宅して早速、母親に洗濯物の取り込みをお願いされ、ベランダへ出た彼は足元に落ちていたそれに気付いた。
ぐちゃぐちゃに丸められた紙だった。

まさか。

恐る恐る紙を広げたそれには、全体を引き伸ばした、あの店主の歪んだ写真が大きく印刷されている。
その上から『お待ちしております』と殴り書きをされていた。


ベランダに投げ込まれていたその紙と、公園で起きていた一連の事を母親に伝え、警察にも相談をしたのだが、結局その後何もわかる事はなかったという。


この記事は、猟奇ユニットFEAR飯による青空怪談ツイキャス『禍話』の (シン・禍話 第六夜) 『追ってくるチラシ』(52:55~)再構成、脚色し文章化したものです。

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