禍話リライト「古いテレビ」【怪談手帖〈未満〉】
「私はそのころ、今もそうかも知れませんが、とにかく物知らずで愚鈍な子でした……」
現在イラスト関係の仕事をされているAさんの幼少期の記憶は、彼女が云うには「灰色の記憶」であるという。
物心もつかぬうちに病気で母親を亡くし、父子家庭で過ごしたAさんだったが、小学校に入ってほどなく父親も事故でこの世を去った。
その後は親戚の家に引き取られ、そこからようやく彼女の日々は人並みの色づきかたをするようになった。
「それまではそうじゃなかったんです。母のことはほとんど憶えていなくて。