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余寒の怪談手帖 リライト集

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怪談手帖が大好きすぎて〈未満〉も含め、色々な方のリライトをまとめてしまいました。 原作者・余寒様の制作された書籍、「禍話叢書・壱 余寒の怪談帖」「禍話叢書・弐 余寒の怪談帖 二」…
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2023年3月の記事一覧

(怪談手帖)遺影【禍話リライト】

Kくんが、大学3年生の時の話だ。 サークルの後輩に、遊び人がいた。 遊びと言っても、基本的には女遊びの激しい奴で、大学の授業にはほとんど出席せず、バイトと遊びに精を出していた。 ところがその後輩が、最近遊びを控えているのだという。 1ヶ月くらい、サークルにも顔を出していない。 これは、何かしでかして反省しているか、あるいは本気で恋愛をしているかどちらかだろうと思い、Kくんたちは飲み会にその後輩を呼び出した。 「どうしたんだ?最近」 「嫌なことがありまして…」 少し話した

(怪談手帖)祖父の家【禍話リライト】

Bさんの祖父の家は、実家から徒歩5分のところにあった。 だから小さいころなどは、休みの日のたびに祖父の家に遊びに行っていたのだが、ひとつだけ不思議なことがあった。 日曜日の、薄曇りの天気の日に限って、祖父の家の玄関の引き戸のすりガラスに、後頭部をピッタリつけている長髪の女の後ろ姿が見えるのだ。 あ、お客さんだ。 そう思ってしばらく時間をつぶして戻ってくると、その姿はなくなっている。 ただ、その後に祖父の家を訪れても客などはおらず、誰かが来ていたような形跡なども見られなか

(怪談手帖)貧乏下宿【禍話リライト】

大学時代にAくんが住んでいた下宿は、近くにゴミステーションがあったせいで、カラスの声がうるさかった。 ゴミステーションに集まったカラスは、獲物を咥え、Aくんの部屋のベランダにも来る。 そして戦利品のゴミ袋の中身を漁っているような音も、偶に聞こえてきたこともあったという。 ただAくんはずぼらな性格で、そのベランダに通じる窓に本を積みまくっていたため、半ばそこは開かずのベランダと化しており、外の様子も見えなかった。 だからAくん自身、カラスが集まっていることも、あまり気にしなかっ