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余寒の怪談手帖 リライト集

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怪談手帖が大好きすぎて〈未満〉も含め、色々な方のリライトをまとめてしまいました。 原作者・余寒様の制作された書籍、「禍話叢書・壱 余寒の怪談帖」「禍話叢書・弐 余寒の怪談帖 二」…
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2022年11月の記事一覧

禍話リライト「埋女(うずめ)」【怪談手帖】

体験者Aさんが、「性別を明かさないで欲しい」という条件と共に、『怪談手帖』の綴り手である余寒さんへ語った体験談。 「私自身はそれを体験してもいないし見てもいないんですよ。 だから、私にとってこれはただの”噂”なんです」 Aさんはあらかじめそのように断ってから話を始めた。 Aさんが子供のころ、周囲のごく狭い範囲で「女のお化け」が噂になったことがあった。 噂が流布した当時は、あの口裂け女が社会現象となり、そして収束した年からさほど経たない時代だったので、口裂け女のコピーみたい

禍話リライト「ムジッテ」【怪談手帖】

「どっちかっていうと、今でもあの辺りじゃ不審者扱いなんですけど」 とは、この話をしてくれたAさんの弁である。 今は関東の大学に通っている彼女、郷里は東北にあるのだが、住んでいた地域でおかしな人物が目撃されているのだという。 「地域、というかうちの町を含む、ごくごく狭いエリアで。 あのへん、長い道とか坂が多くて」 そこを歩いていると、行く先向こうの道の遠い角から、男が覗く。 壁から出した首をグッとこちらへ向けて、大きく目を開いて見ている。 鼻が高くて彫が深い、所謂濃い顔で、

【怖い話】 禍話リライト 怪談手帖「やらいさん」

 中学校時代の同級生だったAさんは、僕と同様、幽霊の類を見たことがないという人だった。とはいっても、僕と彼女とでは事情がだいぶ違っており、僕の方はさしたる理由もなく、ただ単にそういう感受性や感覚が皆無であやしいものに出会わないのに対し、Aさんの場合は、はっきりした理由があった。  ——御利益を受けている。  彼女の一家が頼んでいる「神さまのようなもの」のおかげで、幽霊だとかお化けだとかから、「守られている」のだと。  当時の彼女は、霊感だ何だといった話題になったとき、そのよう