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余寒の怪談手帖 リライト集

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怪談手帖が大好きすぎて〈未満〉も含め、色々な方のリライトをまとめてしまいました。 原作者・余寒様の制作された書籍、「禍話叢書・壱 余寒の怪談帖」「禍話叢書・弐 余寒の怪談帖 二」…
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2021年10月の記事一覧

禍話「煙々羅」

しづが家のいぶせき蚊遣の煙むすぼゝれて、あやしきかたちをなせり。まことに羅の風にやぶれやすきがごとくなるすがたなれば、烟々羅とは名づけたらん。――『今昔百鬼拾遺』  怖かった話ですか、そうですね、子供の頃に聞いて、思い出すと今でも気味の悪くなるような話ならありますよ。  Aさんはそう言って、今は亡きひいおばあさんから聞いたという話をしてくれた。  Aさんが小学校の頃、たまたま他の家族が出払っていたとかで、当時まだ矍鑠としていたひいおばあさんと二人きりでテレビを見る機会が

禍話リライト「木霊」(怪談手帳より)

百年の木には神ありてかたちをあらはすといふ。 鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「木魅」 「小学一年生の時のことなんですけど……」 と、Aさんは懐かしそうな顔で口を開いた。 Aさんの通っていた小学校の校庭の隅の、木々の密集した場所、そのさらに奥に、小学校ができるより前から生えていると伝わる一本の古い松の木があった。それが、彼らの間で〈お化けの木〉と呼ばれていたのだという。 「松って表面が鱗みたいになってるでしょう? その模様が人に見えるんですよ……こう、腰をかがめて立ってるお