禍話リライト「ものを言う岩」(怪談手帳より)
それはいわゆる〈こそこそ岩〉の話なのだという。
〈こそこそ岩〉とは、水木しげるによって取り上げられたこともある民話で、簡単に言ってしまえば夜その岩の前を通るとこそこそと何か話すような物音がしたというような話だ。〈こそこそ岩〉という名前ではなくても、岩が異音を発する、ものを言う、またはすすり泣くというような話は日本各地に分布している。
Aさんという女性が幼いころの話だ。
彼女の父方の祖父母は、ある低い山の上に住んでいた。祖父母の家のそばにある畑から少し藪の中に入ったあたり、草