こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ

『こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ』岡田淳(理論社)が、第69回産経児童出版文化賞・大賞を受賞したそうだ。

こそあどの森シリーズは全12巻で完結していて、これはその番外編にあたる。本編が完結したあと、それでもやっぱりまたこそあどの森の住人に会いたい、という声がたくさんあったのだそうだ。私自身そのひとりで、発刊されたときは"またこそあどの森の住人に会える"とうれしくなった。

記事を見たのをきっかけに、今日あらためて読み返してみた。

こそあどの森に住むおとなたちは、今はもう確立されたくらしがあって、日々の生活を営んでいる。しかし、おとなにも子どもだった時代はあるわけで、今のくらしに至るまでにはそれぞれに今まで歩んできた歴史があり、スキッパーやふたごたちの知らないともだちがいた。一枚の写真から記憶を辿ってゆくのは、遠い時をさかのぼって昔の自分に再会しにいくような、そんな感覚なのかもしれない。

過去の思い出が語られるなかで、おとなたちにもみんな、今の仕事や生活、夢につながるきっかけがあって、それは自分を変えるきっかけでもあったし、次第に自分の一部にもなっていったものだったのだな、と気づかされる。今と昔とは、同じ自分であってそうでない、でもやっぱり自分でもあるのだ。

とくに、ギーコさんとスミレさんのおはなしが、私はとても好きだ。
自分の望む未来に導いてくれる3人のうち、だれか1人を選ぶことはせず、全員大切だから一度きりの出会いの記憶をのこしてだれも選ばなかったギーコさんの選択。人とはちがうものが見えたり聞こえたりしていたスミレさんが、そのことを隠さずにいられる大切なともだちだった、森のおばあさん。その、出会いと別れ。
もう会うことはできないかもしれないけれど、その出会いはたしかに今をかたちづくる礎になって、つながっている。そのことが、あたたかく胸にじわりとしみわたっていく。

やっぱり、何度読んでもいいな。読んでいるととても満ち足りたような気持ちになる。こそあどの森シリーズは、この先もずっと、大切に読み続けていきたい作品だ。


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