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半額スカート、単純なわたし

偶然行き当たった催事にふらふらっと彷徨い込む。結果、お買い得価格でジャケットとワンピースとスカートを購入した。

店員さんに「これだと、上に何合わせるのがいいですかね?」「これ、ほかにはどう着回せますか?」と尋ねる。わからなければ聞けばいい。いや、わかっていても聞けばいい。結果、「ほおお、確かに…!」と新鮮な気持ちになる合わせ方を教えてもらえた。さすがプロ。ありがたい。

昔は店員さんに尋ねるのが本当に苦手で、だからアパレルショップ自体も苦手だった。「ひいー、話しかけないで〜」と思ってしまうから、時間をかけて見られない。そそくさと退散してしまったり、「これ、何と合わせればいいんだ?」と疑問に思うものを買ってしまったり。

今も、「お似合いですよ〜」と心にもなさそうな褒め言葉を投げてくる人は苦手だ。今日の店員さんは、割と素のトーンで「あー、これはいいですね…!」と接客してくれたから話しやすかった。がしがし訊いて、どんどん応えてもらえるのは楽しい。

わたしの要望に「あ、それなら…!」と広い催事場から何度も探してきてくれた。店員さん自身が楽しんでいるような、やわらかい雰囲気が素敵。

売ってやろうという意識が透ける人だと、買う気が萎えてしまう。わたしも長らく書店や文具屋や雑貨屋で接客をしていたのだけれど、お客さんとキャアキャア言いながら「これ!これかわいいですよね…!」と盛り上がるのが何よりも楽しかったし、そうやって接客した人の方が買っていくことが多かったように思う。

結局、ジャケットの色味・デザインの違いで悩んだ以外は、「全部買います!」となった。いや、必要なものだったから浪費ではない、断じて。でも、まさかそんなに買うとは思っていなかったらしい店員さんは、「わー!ありがとうございますー!」と目を丸くさせていた。滅多に服を買わない人間だからなんです……。

試着室で新しい服を身につけたとき、丸まりがちなわたしの背がシャンと伸びた。気に入ったおニューの服は、ちょっといい姿勢で歩こうかな、なんて気にさせてくれる。単純だなあ。でも、単純な人間は小さなことで幸せに浸れるのだ。

今日は、好い日。

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