2年越しのありがとう-チャットモンチー最後の武道館ライブを見て

初めてnoteに投稿する。

私はさきほどnoteに登録したばかりの初心者だ。こういったサイトがあることを知ってはいたが、投稿するのは初めて。メールの下書きからこのライブレポートが出てきて「どこか形に残せる場所はないか」と悩んだ結果、noteに書き込むことにした。初めに言っておくが、これは2018年7月4日に日本武道館で行われた、チャットモンチーのライブのレポートだ。ライブ終演後、ホテルに帰ってから勢いで書いたものだと思う。約2年前のことなので、記憶が危ういし、いきなりライブの途中から始まるし、不完全なものであるかもしれない。だけど、私はこれを残しておきたかった。そして出来れば、あの場でこの空気を共有した人達に読んで欲しい。

少し捕捉しておく。私は中学2年生の頃からチャットモンチーを聴いているリスナーであった。高校生の頃はチャットモンチーのコピーバンドをし、突然のくみこんの脱退に衝撃を受けた。大学に入った頃にえっちゃんの妊娠と結婚報告にまたも驚かされた。初めてチャットモンチーのライブに行ったのは求愛ツアー。当時福岡にいた私は最初で最後のZeppFukuokaでのライブをチャットモンチーで体験することとなった。そして、社会人になった時にチャットモンチー『完結』発表。チケットは軒並み外れたが、優しい同行者の方が見つかり、長崎から遠征。初めての武道館ライブに臨んだ。

2年前の日付のメールは、この文から始まる。

『色々書いたけど、チャットモンチーに出会えて良かったと思えるライブだった。』

本当に急にはじまるし、感情が入りまくったぐちゃぐちゃのレポートだが、その当時のままの勢いで綴った文を読んでもらいたい。以下、本文である。


砂鉄で『色あせたバックステージは空へ捨てた』。
『昔の曲をします』って言って始まった惚たる蛍がすごく良かった。初めて生で聴いたけど、とんでもない曲だと思った。
名曲染まるよはアレンジしていて、私には受け入れるのが難しかった。同行者の方が、ライブ終わりに“くみこんに見せつけるみたいに、あっこちゃんがドラムを叩いていた気がする”と言っていた。ドラムを聴いて、『ああ、この人ドラム一生懸命練習したんだな』と思った記憶がある。それでも何だか複雑な気持ちだった。

前半が終わり、“私が好きだったのはスリーピースのチャットモンチーだったのか?”という思いがあり、前述した通り複雑な心境だった。コンサートのように突っ立っている観客。私が最後に見たかったのはこれじゃない、という思いでいっぱいだった。後半が始まり、ストレングスバージョンの編成を見た時も同じように感じた。
それでも、マジョリティマイノリティ、良かった…。曲によると思う、昔の曲を今のアレンジで聴くのは私にとって苦痛だった。そんな私は本当のファンなのか?とかなぜかライブ中に葛藤してた。
しかし、流れが変わる。ドラムセットが出てきたのだ。サポートを呼び、かつてのスリーピースの形になる。すぐに立ち上がる観客達、そうだよね。これを待っていたんだよね。

『私達が10代の頃に書いた曲をやります。』
そして始まる、東京ハチミツオーケストラ。
この日初めて、観客達が手を挙げ楽しんだ。

怒涛のセットリストが始まる。
東京ハチミツオーケストラの次は、バスドラが“とび魚のバタフライ”のリズムを刻み始めた。待ってましたとばかりに盛り上がり、お馴染みのクラップで応えるオーディエンス。四分音符のリズムを刻み、えっちゃんが歌い始める… ところで、何故かスティックのカウントが入った。始まったのは“さよならGoodbye”『??!』武道館にいる誰もが驚愕しただろう。やられた。最後の最後まで、茶目っ気いっぱいのチャットモンチーだ。
サビではえっちゃんが高らかと歌い上げる。人生のどん底の時代にコピーした“さよならGoodbye”。良くも悪くも、あの頃の気持ちはもう薄れてしまった。吐いて捨てるような世界だと感じていた、あの頃の私の気持ちを代弁してくれていた。吐いて捨てるような世界でも、この曲に出会えて、最後に生で聴くことが出来て良かった。

さよならGoodbyeが終わっても、チャットモンチーは私達に隙を与えない(とても嬉しいことだ)。続けて始まったのは、“どなる、でんわ、どしゃぶり”。ギター独特のかっこいいリフが武道館に響く。真っ赤な照明が3人を照らす。こちらも絶対に聴きたかった一曲。イントロで会場が沸く瞬間は、何度経験しても気持ちが良い。

耳に馴染んだベース音が会場に響く。“ラストラブレター”。最後なのに、めちゃめちゃかっこいい。

バンドをしていたら、次の曲を、ほんのささいな瞬間で知ることがある。みんなとイントロでわっ!となる瞬間が好きなので少し憎い才能だけど、この日はえっちゃんのことをみんなより早く理解出来たようで嬉しかった。この曲は、私にとって特に特別な曲だったからかもしれない。曲前に鳴らしたコードを聴いてすぐ分かった、次の曲は『真夜中遊園地』!
初めてのライブでした曲。何度も何度も聴いたから、体に染み付いてしまったのだろう。『幸せが両手広げて抱きしめてくれるというのに』で両手を広げる橋本。『どこに向かっているんだろう』という歌詞は、“完結”を初めて体験する彼女たちにぴったりのフレーズではないか。

\バンドで一番はじめにコピーしたー!/
え『ほんとに嬉しいわぁ』
あ『(解散しても)してな…』
私も(やるよ…)って泣きながら呟いた。気づけば、横の男の人も泣いていた。横の男の人、開演前は「告白から聴いてないな~」って言ってたのに。何だか少し笑えて、でもそれが嬉しかった。

『次で最後の曲です。』
ストレングス部隊が出てくる。
最後の曲は絶対にこれだろうなあ、と誰もが思っていただろうけど、ストレングスアレンジなんて!
お決まりの、『二本足で立つ』~の所は、今日は長めで嬉しかった。叫んだよー!!
本編は終わったけど、絶対まだ終わらせない!そんな決意が武道館中に溢れる。拍手は鳴り止まない。私はというと、同行者と話すこともなく、ぼーーーーっとして拍手をしていた。あ、でも「ちょっと休ませてあげて…」って思ったことは覚えている(笑)

そして始まったアンコール。
“チャットモンチー is Forever”Tシャツを着た2人と、サポートのドラマーが出てくる!
バスドラの音が響き!一緒に歌ってなー!の声。あっこ『わーん!つー!わん!つー!シャングリラ~~!!!』
銀テープパーン!わぁぁって、またテンションが上がる。“シャングリラ”のところはみんなで熱唱!
そして畳み掛けるように、風吹けば恋。このあたりはテンションが上がりすぎたのか、記憶が曖昧である…。

風吹けば恋が終わった後、えっちゃんとあっこだけステージに残った。二人きりになってから何年経っただろう?二人で支えあいつつ頑張ってきたのだろう。『えっちゃん、もう何も喋らんつもりやろ?』福岡の問に『なんて?』と答える橋本。いつものように、のほほんとしているようで目には涙が光っていた。『えっちゃん、今きっと優しいこと言われたらヤバいで』意地悪そうにいう福岡。その言葉に応えるように、客席からありがとうという声が飛ぶ。いつしか大きな拍手になり、武道館中を包み込む。しかし、はじめに涙したのは福岡の方だった。
二人とも、本当にタフで。くみこんが脱退する時も涙を見せなくて。でもきっと、挫折しそうな夜は何度もあった。そんな二人が涙を流している姿を見て、目頭が熱くなった。気づいたら私も、横の男性も、周りの人たちみんな涙を流していた。鼻をすする音がそこら中から聞こえる。

本日様々な形を魅せてきたステージに、最後に出てきたのはグランドピアノと小さな椅子。
『泣いて歌えないと思ったから、歌詞を表示してもらうことにしました。一緒に歌ってください』という橋下の言葉。
予想はついていた。橋本がボーカルで、福岡がピアノの曲といえば。

『サラバ青春』

会場中から、喜びか、“泣いてしまう”という声か、溜息のように固まって聴こえた。
スクリーンには歌詞が映し出される。恐らくこの場にいる誰もが何度も何度も聴いた曲。
『卒業式の前の日に、僕が知りたかったのは 地球の自転の理由とかパブロフの犬の事じゃなくて』『本当にこのまま終わるのかってことさ…』
チャットモンチーが終わる実感がなかった。だけど涙を堪えながら歌うえっちゃんを見ていると“本当に終わってしまうのだな…”とようやく思った。


『汗の匂いの染み付いたグラウンドも
ロングトーンのラッパの音も


……さようならって 言えそうにないなあ』

この時の光景を私は生涯忘れることはないだろう。真っ白なステージ、二階席からの景色、すすり泣く声、頬に伝わる熱い涙。チャットモンチーが大好きな観客みんなと、終わる青春を見届けることが出来たことが幸せだった。
最後に2人がステージに残り、拍手に包まれる。最新アルバムの中で本日唯一演奏されなかった『びろうど』が流れ始めた。深いお辞儀をして、2人は最初のようにステージの中に入っていく。2人がステージから去っても、拍手はしばらく止まることがなかった。

『生きていくのよ。これからも。』

母になった橋本からの最後のメッセージ。
チャットモンチーがなくなっても、思い出は消えない。これからも生きていこうと思った。


本文終わり。

コロナ禍でライブが中止になる中、こんなに素敵なライブがあったことを思い出した。ライブDVDは、なぜだか手に取ることをしていない。あの時の自分の記憶を大切にしたいから、と思いつつ音楽業界が廃れてしまうのは嫌なので手に入れておくべきか、という葛藤に悩まされている。コロナ禍でも、絶対に音楽は止まない。また必ずライブに行く。チャットモンチー、素敵なライブをありがとう。

拙い文をここまで読んでくださった方がもしいるのなら、お礼を言いたい。ありがとうございました。