見出し画像

テオ・ヤンセン展を観て

テレビCMを見て興味を持った。
ただ、楽しそうな展示といえば、大抵遠方まで足を延ばさねばならない。
今回もきっと…と思いきや、県内開催と聞き喜んだ。

期待を遥かに上回る楽しい展示だった。
大きな刺激を受けて帰宅。
あぁ、美術館がもっと頻繁にこうだったらいいのに。

又、鑑賞時の居心地の良さが今までになく快適だった。
コロナ収束後も、是非、人気展では人数制限を設けて頂きたい。
事前予約は面倒に感じたものの、これ程良い気分で鑑賞できるならば今後も是非お願いしたい。

さてさて。
まず、テオ・ヤンセンさんは物理が専門の方だった。
そして、も描かれていた。
だからこうなるのか、と納得。

画像1

作品の結束バンドの先端を切り落とさないスタイルが妙に気に入ってしまった。
説明されずとも尻尾に見えたソレに、産毛の如く結束バンドがピンピンしていて面白かった。
仮に自分だったら、刷り込まれた概念が邪魔をするのが目に見えた。
誰かにお見せするモノなら余計、いくら手間に感じても、切り落として綺麗に整えてしまうだろう。
だから、あの状態でOKにできるのはある意味羨ましかった。

「ねぇ、リピートタイの先端、自分だったら切る?」
「俺?んー…切らないな」
ニヤける夫に向けて、声にならない驚嘆を表情で示す。
追って、怪しい目線で更に問い詰めると、二人して笑えてきた。
だって夫が切らない訳がない。
職場で日々切り落しているのを私は知っている。

今まで興味ゼロだった物理への関心が、帰宅する頃には激変していた。
「学生時代に出会いたかったな~。物理学びたい欲、パねぇ。」

カチコチの塩ビパイプの塊が、柔らかそうに伸縮する動作を目にして、頭の中が大混乱だ。
「塩ビパイプって固いよね?今、伸びて曲がった!?」

画像2

作品の説明書きに、『ペットボトル空気を圧縮して貯めるから、無風でも動く事ができる様にした』などとあり、言葉では理解できても、具体的な仕組みとしては全く理解不能で、どんどん楽しくなってくる。
「あのペットボトルに圧縮した空気が貯められるの?物理スゲーな。」

他にも、海水に入ってしまうのを防ぐ為に、ホース内の圧力変化で水を感知させるとか、強風から身を守る為に、風向かって体勢を縦に向けさせ、地面に杭を打ち込む術を持たせるだとか、塩ビパイプの塊がそれを自分でするらしいのだ。
物理のカッコよさを、次々に見せつけられた。

画像3

むしろ『プログラミングで制御してる』と言われた方が余程しっくりくるのに。
そういう機能を、単なる物にさせよう(させられるはず)という発想が自分の中には皆無だったので、心底驚き、面白くて仕方なかった。

画像4

更に、アートとしての立ち位置も持たせたが故に、凄い仕組みだけで終わらず、魅力はより一層大きく膨らんで見えた。

砂浜の砂粒が付いている、すげー。
使い込まれ役目を終えた引退機、ボロかっこいー。
ホーリーナンバー、響きサイコー。
あぁオモシロイ。

新品でピカピカの綺麗さではないカッコよさ。
綻びが一層輝きを増す価値。

画像5

帰宅後、早速夫は作り始めた。
1パーツ作り上げた時点で、「これがホーリーナンバーだ!」とか得意気に言ったりしながら楽しそうに完成させたソレを、団扇で扇ぎ早速動かしてみたのは私。
うん、いいね~。
今、玄関に飾ってある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?