見出し画像

評価経済社会ってなに? 〜DAOがもたらす「新しい経済社会」の在り方 vol.1 〜

DAOの構築・運用をサポートするweb3スタートアップUnyteです。今回のテーマは、DAOがもたらす「新しい経済社会」の在り方です。

本記事vol.1から、今後公開予定のvol.4までの四部構成で、皆さんの中にあるDAOのイメージを、より鮮明にしていきたいと思います!!!
今回は、まず評価経済社会をテーマとして取り上げます。

<こんな方に読んでいただけると嬉しいです>

  • DAO運営やコミュニティ事業に興味のある方

  • DAOという文脈で「評価経済社会」について理解したい人

  • 新しい価値観に興味のある人

(この記事は約10分で読めます)


1. 評価経済社会の成り立ち

「評価経済社会」とは、近年の経済・社会の進展やインターネットの普及やソーシャルメディアの台頭などにより、消費者が商品やサービスに対する他者の評価(レビュー、口コミなど)を重視し、それに基づき人々が意思決定を行うようになった社会のことを指します。

例えば、私たちが仕事の同僚や友人と外出先で食事に行こうという話になった時に、Googleマップなどの口コミを参考にお店を選ぶことは珍しくありません。消費者である私たちが店舗のサービスやメニューに対するレビューや星など、他者の意見を簡単に知ることができるようになったことがその背景にあります。

いまの世の中では、飲食店をはじめ、モノ・サービス、または人に至るまで、人々から付加された情報である「評価」を元に消費者は自分の好みやニーズに合った最適な選択を行うことができます。

このような社会では、企業や個人が提供する「価値」を証明するために積極的に評価を集める活動が出てきます。これにより、人々の選択行動が情報に基づいて進化し、市場の競争がより透明化していくとされています。

では、現代に至るまで主流となってきた「貨幣経済社会」と、「評価経済社会」はどう考え方が異なるのでしょうか。ここから「評価経済社会」の考え方について見ていきます。

2. 評価経済社会における「価値」を貨幣経済社会との比較で考える

「評価経済社会」の考え方を、「貨幣経済社会」と比較しながら、わかりやすく読み解いていきます。まず、両者の大きな違いは、価値の基準です。

貨幣経済社会では価値は貨幣によって定義され、物やサービスは貨幣を通じて取引されます。一方「評価経済社会」での価値は、他者からの評価により生まれたプラスアルファの情報に基づきます。つまり、商品やサービスの質に対して、情報提供者の信頼性までもが消費者の選択に影響を与えているのです。

人々の取引のプロセスに両者の定義を当てはめると、この価値の違いがより鮮明に見えてきます。違いをさらにご理解いただくために、ここからは具体的な事例を用いながら説明していきます。

2-1. 「貨幣」を伴わない取引事例

以下の取引事例をもとに、評価経済社会が扱う「価値」について考えてみましょう。
🍎 リンゴで、評価経済社会を考える


日本のある町に、果物が大好きなAさんと、リンゴ農家のBさんがいました。AさんとBさんは近所の知人です。二人は仲が良く、Bさんは自宅から遠くに出かける際、よくAさんに車で送迎してもらっていました。

Aさんは、Bさんが車の中でしてくれる豊富な話題のトークをいつも興味深く聞いていて、Bさんを車に乗せる日が来ることを楽しみにしていました。

一方で、Bさんはいつも送迎してもらう際に、ニコニコと自分の話を聞いてくれる聞き上手のAさんに好印象を持っていて、気分良く話ができるAさんと過ごす時間を楽しみにしていました。

ある時、ふとしたことがきっかけでBさんはリンゴ農家だということを、Aさんは知ります。Bさんの送迎をしていたある日、Aさんは「自分は果物が大好きで、毎日食べる」と話しました。すると、Bさんは「いつもお世話になっているAさんに、リンゴを贈りたい」と伝えました。

そして数日後、Bさんは自分が育てたリンゴを一箱、Aさんにプレゼントしたのです。ちなみに、Bさんが出荷しているりんごは国内有数のブランド品で、Aさんに渡したリンゴは市場には出回らない希少な最高級品でした。


この事例をもとに、評価経済社会について考えていきます。

2-2. 「モノ・サービス」の交換を仲介するもの

この事例の取引における大きな特徴は、AさんBさんの間で貨幣を伴わずに「モノ・サービス」が取引されているというところにあります。

この取引は、一見するとAさんが行なっている送迎と、Bさんが作っているリンゴとが交換されていて、お互いwin-winという構造のように読めます。しかし、評価経済社会の考え方に則って考えると、この取引は単なるモノ・サービスの交換とは解釈されません。

「評価経済社会」という言葉を提唱した岡田斗司夫氏の著書によると、

貨幣経済社会とは、貨幣を仲介にして「モノ」「サービス」が交換される社会です。同じように「評価」を仲介として「モノ」「サービス」、そして「カネ」すらも交換される社会。

岡田斗司夫. (2013). 評価経済社会・電子版プラス. FREEex.

と記されています。

即ち、人々はモノ・サービスを貨幣を仲介として交換する場合とは全く別の目的や理由で、他者に貢献するのが評価経済社会というのです。

では、Aさん・Bさんは、一体何に「価値」を見い出し、モノ・サービスを与えているのでしょうか。

2-3. 「与えよう」と思うのは何故?

前の事例では、まずAさんが、Bさんを送迎しているところからストーリーが始まります。Aさんは、ご近所付き合いとして、Bさんと仲良くしているといったところでしょう。着目すべき点は、Aさんが半ば一方的にBさんが必要としているだろう送迎サービスを与えていることです。

Aさんには、Bさんを送迎することで実は心理的にプラスとなっているという背景があります。事例を読み込むと、AさんはBさんの話をいつも楽しみにしていることがわかります。Bさんが提供してくれる話題やトークを含めてBさんを総合的にプラス「評価」していて、それに対して時間を費やす「価値」があると感じているのです。

これが、AさんがBさんを何度も送迎してあげている理由です。自己の判断基準に鑑み良い評価をしている人からのニーズがあるから、自分が提供できるものを与える意思決定をしているのです。

2-4. 継続して「与える」ことで得られるもの

さて、しかしAさんは本当に、「Bさんは与える価値のある人だから」という理由のみで、送迎を行なっているのでしょうか。評価経済社会では、Aさんにはもう一つ他のメリットがあって送迎を行なっていると推測されます。

Aさんにとって何が継続する心理的な報酬(インセンティブ)となっているのでしょうか。上の事例を読み進めていくと、Aさんの送迎をきっかけに二人の仲が徐々に良くなっていくのが分かります。送迎してもらっているBさんは、次第にAさんと過ごす時間に対して 「居心地の良さ」を感じるようになります。

ここが二つ目の注目すべきポイントです。Aさんは送迎というサービスを与え続けることにより、Bさんから人としてプラスの評価を受け取り、「信用」を積み重ねているのです。

これが「評価経済社会」による考え方の核心となっている部分です。

実際に、Aさんは事例の中で、「ニコニコと自分の話を聞いてくれる聞き上手」とBさんから高く評価されています。そして、Bさんは自分にとって価値ある人物と思うAさんに、感謝の印としてリンゴを渡します。ここで話は終わりますが、ここから先の話の展開は、何となく予想がつきますよね?

Aさんはきっと、Bさんのことを「とても甘くて美味しいリンゴを作れるすごい農家さん」とか、「気前良く希少な作物を譲ってくれる親切な人」などの高評価をさらに第三者にも伝えていき、Bさんの信用を高めることに貢献していくことでしょう。

3. 評価を受け取り「信用」を高める

ここまで事例を用いて、評価経済社会では人の評価によって意思決定し、それは貨幣に変わる価値あるものとして取り扱う社会であることを説明をしました。

相手の評価を基軸に「財・モノ・サービス」を与え、そのフィードバックとして「評価」と交換する。それを蓄積することによって自身の「価値」を形成する。これが評価経済社会によって説明される、エコノミクスなのです。

私たちにとって馴染みのある貨幣経済社会と対比すると以下のようになります。

社会において貢献した人には、それに応じた金銭が支払われる代わりに評価がつく。また貨幣を用いて市場でモノ・サービスを得るのではなく、評価によって決められた価値で信用が積み重なり、より多くのモノ・サービスが集まり経済活動が高まる、ということになります。

4. 私たちの身の回りの評価経済社会

ここまで少し複雑な概念を整理しながら読み解いてきた評価経済社会の仕組みですが、実は私たちの暮らしの中でも馴染みのあるものです。例えば、どのような取引・やり取りが「評価経済社会」なのか、身近な事例をいくつか紹介しましょう。

【事例1】先輩から教科書を譲ってもらう

  • 上級生と下級生の間で、相互の信頼関係や評価に基づく教科書の受け渡しなどが考えられます。個人間のやり取りという点では、上述のリンゴの事例と類似していますが、片方のみがモノを与える形になっています。

【事例2】誰かに知人を紹介する

  • コンパや同窓会、ビジネス関係で知人紹介をする場合では、コミュニティや人々の相互評価に基づき信用するケースが考えられ、その場合、評価経済社会との見方ができます。

5. 評価経済社会の未来展望

将来的には技術の発展が進むことで評価の信頼性が高まり、より精緻で正確な評価が可能になると期待されています。ブロックチェーン技術やAIの活用により、評価の透明性は向上し、市場の効率性が向上することも予想されます。個々人の多様なニーズに対応する新たな評価基準や価値観が生まれ、それが社会全体の活性化に繋がると期待されています。

私たちが真に価値があると思うものに着目され、個人の判断やニーズを重視したシステムが発展してきているのです。これから、「自分の持つ価値基準」が今より大切にされる時代が来ます。

ここでは自らの真の価値が周囲からも認められ、満足のいく生活を過ごせるようになるでしょう。従来の金銭的価値にモヤモヤしたり不満を感じたりすることなく、豊かな人生を築くための適切な選択だと確信できるはずです。
さらに、貨幣経済社会では見過ごされてきた価値も再評価され、望む未来を自ら創り出す力を持つことができるでしょう。このような社会の転換が、未来へ期待することの一つと感じます。

自分の持つ価値観や志向が尊重され、それに基づいて新たな可能性が開かれる社会は、特に若い世代にとっては新しい経済社会の一番の魅力となるでしょう。

6. 新しい経済社会で活躍するために

貨幣経済社会では、市場原理に基づき全ての人々が十分に満足できるモノ・サービスが提供されることは稀です。スケール化すると、利益を最大化するために最低限の満足度を追求することが一般的となるからです。

一方で、評価経済社会では、個々の持つ価値基準が重視されます。このシステムにより様々な嗜好やニーズに応じた多様なコミュニティが形成され、相互評価により個々の充足感が高まり、人々が所属したいと思う環境はより増していく可能性があります。

私たちが新しい経済社会で活動する上で、どのような価値観が自身にとって重要なのか、どのコミュニティの基準が適しているのか、そしてどこからの評価を自身が得たいのかを考えることが重要です。この視点を大切にすることで、評価経済社会が持つポテンシャルを最大限に活用できるでしょう。

これを踏まえ、次回以降の記事では評価経済社会における「DAO」の強みや、どのような人が活躍できるのかについて具体的に掘り下げていきます。

それでは、続編をお楽しみに!!!


DAO構築・運営やSaaSに関して詳細な情報が必要な場合は、以下からお気軽にご連絡いただければと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?