空白に書くということ。
本日は久方ぶりに楷書で漢詩などを書いた。
書道は半紙に筆を使って墨で書くのが一般的である。
下書きすることも消しゴムで消すことも出来ない一発勝負。
上手くいかない時は書き損じた半紙が山になる。
墨を含ませた筆をその空白に乗せる瞬間までに全体の仕上がりを予測し、イメージできなければ書は書けない。
今日書いた漢詩は長い詩で、四行に収めることをイメージして書いた。
上下左右を揃えつつ、中心の軸が直線にならなければ楷書の文字は美しく見えないのである。
半紙にはマス目がない。縦線もない。
自分の経験と勘、子どものころから師匠に叩き込まれた
「中心を揃えよ。上下を揃えよ。名を書く場所をせせこましくするな。」
師の教えと基礎を守りつつ自分のスタイルを作っていくのが書の楽しみでもある。
行書で好きな文字を書くときはその動きと躍動感が損なわれないように
「半紙からはみ出してもいいんや!」という気持ちで書くことにしている。
自分の師匠は、腕を持って筆の稽古をつけてくれるとき、半紙から文字がはみ出しても気にせず、筆を止めずに一気に書ききる人であった。
しかし実際に師匠の書いた作品を見てみると、大胆な書であるにもかかわらずきちんと書は半紙の中に納まっており、墨字と絶妙な空白がさらに書に力強さを与えていたのである。
黒と白。
墨字と空白。
このいかにも地味な彩りのないものに命を吹き込むのは、書く人の心そのものなのであるから、隠しようがない自分の姿がその人の作品になっていく。
書道は漢文で読むと「道を書く」とも読める。
今日も自分の道を書きながら歩いていく。
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