季節は秋、ドカ弁の春到来か?
『明日遊びに行ってくる!』
長女ドカ弁が言い出した。
『あ、そう。どこ行くの?』
『水族館。』
『デート?』
『………。』
キタキタ!ドカ弁!
顔に『はい、その通りです‼︎』と書いてある。まったくわかりやすいJKである。
『ってちょっと待って。また3人デートじゃないやろね?』
『ちゃうわ!明日は○○の誕生日やの!』
ヒュー‼︎誕生日に水族館で初デート‼︎
ドカ弁良かったなぁ。JSのちゃっかりがほっこりかわいい恋をしているというのに、姉の面目なしやったもんなぁ。
女親子でキャッキャと盛り上がりを見せる中、顔を引きつらせながら
『おめでとーよかったなー。』
棒読みでそう言うのがやっとの父スナフキン。
『オレもさぁ心配してたよ!やっと彼氏できたか〜。』
理解を示そうとドカ弁にそう言うが、挙動不審というか、好きな女の子から『実は彼氏が出来てん!』と明るく告げられ、たった今失恋した男子のような顔をしているスナフキンが痛々しくて見ていられない。
男親って本当に娘が好きなんだろうなぁ。私は異性の子を持ったことがないから息子に彼女が出来る母の心中はわからないが、個人差こそあれ、やはりちょっと失恋した気持ちのような気分になるのだろうか。
塩した菜っ葉のように、ヨレっとなり、ちょっと小さく縮んだように見えるスナフキン。
元気出せよ、スナフキン。
『スナフキン、落ち込むことないよ。』
『いや、全然落ちこんでないよ!オレも安心したよ!』
強がるなよ、スナフキン。
『あのさ、私はドカ弁が嬉しそうなの見るの嬉しいよ!私たちの娘をさ、好きになってくれる男の子が現れてくれてんよ。ありがとう、ウチの娘を好きになってやってくれてって思うよ、私は。』
そう声をかけてみた。
『うん。そうやんな。』
やっぱりちょっと淋しいか?スナフキン。
私たちはそろそろ子離れの時期が近づいているのだろう。
子はスクスク伸び、美しい花を咲かせようとしている。
親は少しくたびれ疲れてきてはいるが、根をしっかりと張り、隣で美しく咲こうとする花を見守り続けるのだ。
『これからは娘たちは置いてさ、私たちは2人で出かけたり旅をしようよ、スナフキン。』
そう言ってみた。
『うん!そうやなぁ‼︎』
その調子や、スナフキン。
子離れは嬉しく淋しいものであるが、私たちはいつまでも親だし、ドカ弁もちゃっかりもいつまでも私たちの娘に変わりはない。
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