ちゃっかりの奇跡。
「ただいまー‼︎」
「おかえり〜!」
ちゃっかりが帰宅した。今日はまた勢いがいいなぁ。
ただいまの声はその日の気分を全て物語るから面白い。
ご機嫌さんなただいま。
不機嫌さんなただいま。
落ち込んでただいま。
涙でただいま。
ただいまの種類は多種多様である。
今日のただいまは絶好調なただいま。
ドカ弁はわりとそんなことがあるが、ちゃっかりにしては珍しい。
「どうしたん?今日は元気いいなぁ!」
「ママ、あのね、奇跡がおきたの‼︎」
「奇跡?また大層やね〜!」
「あのね、今日返ってきたテスト5教科ぜーんぶ100点‼︎ちょっと奇跡でしよー⁉︎」
おお‼︎ちゃっかりがテスト全部100点⁉︎それは奇跡やないの‼︎
うっかりそう言いかけて慌てた。
「すごいやん!おめでとう‼︎」
「ありがとう‼︎ちゃっかりもね、ビックリなの‼︎国、数、理、社、保体ぜーんぶ100点なんて奇跡や‼︎」
待て待て、ちゃっかり。
何故今までそのパーフェクトが出なかったのかね?
卒業を数ヶ月後に控えて、ようやく本気出してきたのだろうか?
勉強は嫌いだし、全力で走ると血の味がするから嫌いなどと全てにおいてテキトーなちゃっかりが、5科目満点を取ったことは本人もビックリの奇跡なのだろうか?
奇跡は努力なしではありえない。
最近のちゃっかりは、私たち親や姉のドカ弁に隠れてこっそり勉強していることに実は気がついていた。
朝、机にはドリルや教科書が置かれていて、消しゴムのカスも残っており、密かに努力しているんやなと思っていたが、本人が「私頑張ってます!」という姿を見せたくないのならとそっとしていたのだ。
「ママ!奇跡がおきたの‼︎」
なんとも子どもらしくないのがちゃっかりらしい。
ドカ弁ならドヤ顔でこう言うはず。
「ママ!ウチめっちゃ頑張ったんやで‼︎やった‼︎必死のパッチでやった甲斐があった‼︎」
ちゃっかりちゃんは、あまり感情を出しません。25m泳げるようになっても「わーい。」と小さく呟くだけだったんです。
今までの担任の先生にはそんな風に言われ続ける子であった。
しかし、今の担任の先生はちゃっかりの良さを感じとってくださる先生で、ちゃっかりも先生の期待に応えようと頑張っている様子なのがわかる。
「人の良い部分を見れる人は幸せな人」
亡くなった祖母がよく言っていたが、良い部分を誰か一人にでも見つけてもらえることも幸せなことに違いない。
奇跡のオール100点もいいが、努力のオール100点は更に嬉しいのにきまっている。
今日の喜びを単なる「奇跡」にせず、努力は嘘をつかないのだということをしっかりと忘れないようにしてもらいたい。
学問は遅咲きだったちゃっかり。
ようやく一輪花を咲かせたのだろうか?
今から更に花が開くよう、水をやり、栄養を吸収しながら蕾をたくさん作っていってくれることを願う。
それにしても。
産まれてから現在まで、ちゃっかりに対して「かわいいかわいい」だけでバカ親が好きなようにさせている様子を見て、私の母がため息をつきつつ、冷静にこう言っていた。
「昔からよく言われてるわぁ。出来ぬ子ほどかわいいって。」
この言い伝えって、褒めてるわけではけしてないよなぁ。
わりかし、というか、かなり失礼だと思うが、ズバリと当たっている気もして何が何やらな親心である。
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