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ワルと悪のはざま。

ワルと呼ばれる人には、わかっちゃいるけどやめられない、なんとも言えない魅力があるように思う。

ワルは男女問わず存在するが、異性に絶大な影響を与える彼らは、カリスマフェロモンを撒き散らすのだ。

性格の良い人がいいのに決まっているのに、何故人はちょっとしたワルに惹かれてしまうことがあるのだろう。

このワルとは別に、本当に悪い奴というのも存在しているから、そのはざまを上手く行ったり来たりできる者が上等のワルなのかもしれない。

本当に悪い奴の場合、相手を感情のある人間だという扱いをしないように思う。

自分だけが利を得ることが目的であり、相手を楽しませてやることなどまったく頭にないし、ボロ雑巾のように扱うことにすら抵抗がない。

昔の女友達で、この悪にハマってえらいことになっていた子がいた。

可愛い顔をした彼女は、男の子にモテる女の子だったが、悪い奴にハマってからは姿形が激変していったのだった。

化粧は日に日にケバくなり、デーモン小暮さんもビックリか!という状態になっていったので、皆で『ちょっとあかん感じやん。マズイわ、あのままじゃ。』などと心配していたのだった。

ある時皆でバーベキューをしに海に出かけたことがあった。

そこにいつものデーモンメイクに真っ黒な服を全身に纏った彼女が登場したのである。

明るい日差しの中で、楽しくバーベキューをしようと、男の子たちはレゲエなんかをBGMに流しているのであるが、彼女の出で立ちは、まさしくデスメタルなムードであり、夏の海辺は少し凍りついたのであった。

『まぁまぁ、女の子たちは炭が燃えるまでゆっくりしといてー。』

頭にタオルを巻いた男の子たちは火おこしの準備をするためにその場を離れて行ったので、女同士でお喋りが始まった。

デーモンメイクの彼女の腕には、ものすごいダイヤが埋め込まれたロレックスの腕時計がついていたのでみんなが驚いた。

『すごい!ロレックスやん!どうしたん、これ!』

『あ、これね、彼氏とペアやねん!』

嬉しそうに彼女は言った。

『彼氏からのプレゼント?』と皆が訊いた。

『ううん。私がローン組んで買ってん。彼氏が欲しがるから!』

この彼氏とやらが相当な悪で、次々と高級品を女に貢がせる奴だったのである。

彼女のお父さんは警察官だったので、結局悪の悪事は明るみになり、すったもんだの末にようやく別れることになったようであったが、相手からむしり取るだけの悪は他にも同じ手口で金品を肥やしていたそうだ。

危険な香りがする異性が放つ魅力には抗いがたいものがあるのはわかるが、犯罪に手を染めるまでの悪は勘弁である。

私の好きになる人たちは、上等なワルに泣かされた経験がある人が多い。

自らも泣かしたことがあるのに違いないが、そこはそこでシレッと黙っているような人たちである。

まっすぐな道を歩いてきた人にはない、優しさと強さを持っている人がやっぱり好きだ。

品がないわけではなく粗野な部分を上手に隠す術を知っている人は魅力的な大人だと思っている。

そんなことを夫スナフキンに言ってみた。

『フフフ…。』

いつものアレである。

『あのさぁ、ドカ弁もちゃっかりもこれから色々あると思うけどさぁ、やっぱりちょっとは失敗もしてさ、味のある大人に成長してほしいわぁ。』

こう言うと、再び『フフフ…。』と笑いながら言った。

『ちゃっかりは男を泣かしながら相手を悪者にするタイプ、ドカ弁は男に泣かされながら自分が悪者にされるタイプ‼︎』

あなたは予言者か、スナフキンよ。

ドカ弁もちゃっかりも彼や友達と出かけてしまった休日の午後。

『ワルと悪について』の考察を夫婦で話す以外にすることがないのも結婚以来初めての出来事である。

『で、その予言のオチは?』

スナフキンに訊ねてみた。

『どっちとも悪気がない。』

なるほどー‼︎

やはり無駄に歳を重ねてきてないな!
スナフキン48‼︎

#エッセイ


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