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やつしのやせ我慢。
「めっちゃ寒い!uniさん、背中に貼るカイロ貼って!あと今日体育館で集会あるからさぁ、足用カイロあったっけ?」
朝から防寒準備に余念のない長女ドカ弁。ババシャツを愛するJKである。
カイロカイロ!と言いながら髪の毛は静電気で逆立っているが気にしていない。
対してわが家のJSちゃっかりは「やつし」である。
「やつし」とは、洒落者のこと。
服の色の組み合わせやコーディネートに異様にこだわる毎日である。
今朝はこの冬1番の冷え込みと言われているだけあり、吐く息が白くなるほど寒い朝であった。
「あったかくして行きなさいよ!」
「ママ、やっぱりこの組み合わせは色が一緒でヘンだからコートなしで行く!」
紺色の裏地がモコモコのニットパーカーの上に、同色の紺のダッフルコート姿で鏡の前に立ち、首を捻ってコートを脱ぐちゃっかり。
「ちゃっかり、今日は寒いねんで!伊達の薄着か⁉︎風邪ひくわ!このおしゃれデブ‼︎」
「おしゃれはいいけどデブじゃない‼︎」
またいつものやつが始まった。
JKババシャツ🆚JSやつしである。
結局「やつし」は、暖かいダッフルコートよりも見た目の統一感を優先し、ニットパーカーにショートパンツにレギンスを履いて寒空の中を出掛けていった。
見た目を気にしているだけあっていつも良い香りがするちゃっかりの女子力はハンパない。
「あぁ、わが家にも女の子がいて良かった!」とえびす顔の夫スナフキン。
「ドカ弁は良い香りがしない!部活の匂いがする!」
中学生の頃はバスケットボールの皮の匂いと体育館の匂いを纏っていたドカ弁。
高校生になれば女の子の香りがするようになるだろうという父の期待は見事に裏切られ、今度はプールの塩素臭をくっつけて帰ってくるのだから何が何やらである。
この女子力の差が姉妹の将来を変えることもあるかもしれない。
「ちゃっかりってちょっと石原さとみに似てる‼︎なんかむかつくなー!ちょっと可愛いからって調子乗んなよ‼︎」
などと褒め僻みの意味不明な言葉を吐き、チャリンコをかっ飛ばして出掛けていくドカ弁の後ろ姿は、やはり男子の背中そのものであった。
それにしても。
JKを本気でイラっとさせるJSやつしの女子力。
天晴れである。
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