力尽きたか、ドカ弁。
入学後の課題テストに引き続き、中間テストもさっぱりの結果のドカ弁。
テストで惨敗を連発したのは、ドカ弁には初めての経験である。
ドカ弁は特別頭が良いというわけでは、けして、ない。
今までもえらいこっちゃな結果を出した、やらかしたー‼︎ということはあったが、必ず次にはいくらか挽回してきていたのだった。
憧れの高校に合格し、夢を叶えたまでは良かったが、やはり背伸びして入った学校だったかと本人を見ていても感じる今日この頃。
『あんたさー、今のまんまやったら多分夏休み前に先生から呼び出しくらうと思うで。』
『そんなん大丈夫やわ‼︎たぶん…。』
聞いてみれば、毎日小テストがあり、30点満点中2回以上25点以下の結果になれば強制的に放課後の補習があるらしい。
補習は今のところ受けずにすんでいるそうであるが、毎日のように先生方が言うことといえば、
『受験は団体戦や!もう始まってるんやー‼︎』
なのだそうだ。
本来は一年間かけてやる数1の授業は夏休み前には終了し、夏休み明けには理系クラスか文系クラスかを選択し、学校に希望する道を報告しなければならないというのだ。
これには親の私もスナフキンも驚き、ちょっとあかん感じの場所にドカ弁は入ってしまったんかもなーと話している。
『やっぱりドカ弁と学力レベルが全く釣り合ってないんちゃうかー⁉︎』
そんなことを親がヒソヒソ話していると、二階からドカ弁が降りてきたのだ。
『なぁなぁ。今さ、LINEがどんどんきてるんやけどさー。』
『かーっ‼︎LINE⁉︎そんな余裕どこにあんねん‼︎』
スナフキンが珍しく声をあげた。
『ごめんて。ちょっと最後まで聞いてよ〜!』
珍しく先にごめんて。などとドカ弁が言うので、LINEの話を聞いてやることにしたのである。
『あのさ、ウチらの中学から今の高校に入った子らからLINEがどんどん入ってるねんけどさー。なんと!みんな中間テストが全教科平均なんか全然届いてないらしくて!終わった、どうしようっていう子ばっかりやねん。』
『なんやてー‼︎』
同時に同じ言葉が出たスナフキンと私。
何故だ?
ドカ弁と違って、中学では本当に成績が良かった子たちがこの学校を受験したのである。
そんな子たちに混じって、ドカ弁が受かる保証などないという中で迎えた高校受験。
親からしてみれば受験前も、合格発表を待つ間も、生きた心地がしない、心臓に悪いわ!という状況であったのだ。
『ウチの中学ってもしかしたら最下位の学校やったとか?』
うなだれるドカ弁。
来年その中学に進学するちゃっかり。
しかもちゃっかりの場合は、ドカ弁よりもさらに全力知らずで今まで生きてきているわけで、今のまんまいくと、ちゃっかりは高校受験から失敗するのではないかとイヤな汗が出てきた。
『あ。でもウチちょっと安心したー‼︎ウチなりの全力で平均的以上のテスト3教科あったんやわー‼︎』
おいおい、ドカ弁よ。
あんたむちゃくちゃ腐ってたやなかったか!?
どうせどうせウチなんてって。
ブツブツ文句ばっかで。そんで母親からすっぱい葡萄って言われて。
そんな三歩歩いたら忘れる鳥に向かって、ツッコミを入れたい気持ちをグッと堪えながらこう言った。
『まぁ、あんたなりには頑張ったわけやな!油断せずにちゃんと明日の小テストの準備しときよ。』
それだけを言って自室にお帰り願った私。
いつもはうたプリの曲を大声で歌うドカ弁の歌声が今日は聴こえてこない。
『ドカ弁、頑張ってるんちゃうかー!』
人の良い親バカのスナフキンは嬉しそうにそう言って、ちょっと見てくるー!とドカ弁の様子を覗きに二階に上がって行ったのである。
すると音も立てずに‘抜き足差し足忍び足’状態で、階段を降りてきたスナフキン。
『ちょっと‼︎ちょっと来て‼︎静かに!』などと小声で呼ぶので、仕方なくそっと二階に上がりドカ弁の部屋を覗いてみたのだ。
なんと…‼︎
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