テルマエロマエと呼ばれて。
夫スナフキンの顔は、濃い。ソース顔?バター顔?なんと言えばしっくりハマるのか表現が難しいが、ひとことで表すとやはり『濃い』である。
最近のモテ顔は『塩顏男子』らしい。
濃すぎず薄すぎず、味わい深いすっきり引き締まった塩味を表現したのはどなたなのかわからないが、センスのある表現だと感心している。
さてそんなスナフキンであるが、彼ほど『わぁ!○○に似てるね!』と言われる人間は珍しい気がする。
この○○とは、俳優さんだったり、芸人さんだったり、バイクのレーサーだったり、誰かの親戚の○○さんだったり。
『いったいオレは誰に似てるんや?』
昔からずっと本人が首をかしげている。
一番似ていると言われていたのは、猿岩石時代の有吉さんである。
毒舌あだ名つけで再ブレイクした後の有吉さんにもやはり『有吉やー‼︎似てるー!』とドカ弁の友達はゲラゲラ笑うのである。
次に言われるのが、濃い顔の代表選手のような俳優さん、阿部寛さんである。
『パパ!みんながさ、ドカのパパって古代ローマ人みたいやなぁ!テルマエロマエやわ‼︎って爆笑してるわ!あはは‼︎』
ドカ弁に弄られまくって半笑いしている顔は、やはり阿部ちゃんのように見えてくるから、古代ローマ人と言われるのも無理はないのかもしれない。
そんなスナフキンであるがインドネシアのバリ島に行くと、真っ黒に日焼けした彼を見て、現地の人にまでインドネシア人に間違えられるから驚きなのである。古代ローマ人からインドネシア人に変身である。
またややこしいことに、ドカ弁がスナフキンに似ているので、スナフキンがインドネシア人で、妻の私が日本人のカップルだと思われ、私に似ているちゃっかりとスナフキンに似ているドカ弁は、ハーフ姉妹だと間違えられる有り様なのである。
『バリ人にしたらちょっと背が高いからジャワ人?ジャワから遊びにきたの?』などと質問される羽目になり、何が何やらである。
ジャランジャランとはインドネシア語で散歩のことを言うが、家族でジャランジャランに出かけると、リュックを背負ったバックパッカーや自転車に乗って道に迷った白人に必ず道を尋ねられるので、のんびりジャランジャランできやしないのである。
バカ丁寧に地図なんかを見せてあげながら、簡単な英語やインドネシア語を混ぜて道を説明してあげようとするお人好しなスナフキンは、現地人からも観光客からもジャワ人認定されてしまうことになり、私はジャワ人の日本人妻、ドカ弁とちゃっかりはハーフの姉妹だと勘違いされてしまうのである。
同じ安い宿に泊まっていると長期滞在者の様々な国の人たちと顔なじみになる。
『実は生粋の日本人なんだ』と告白すると、wow‼︎などと驚かれ、日本のトーキョーに行ったことがあるよ!とか、日本のスシは美味しいけど、私たちの国のサーモンにはかなわないわよ!などと自分たちの国の美味しいもの自慢大会なんかも始まり、最後はまた会えるといいね!と別れるのが恒例になっている。
誰に似ていようが、国籍を勘違いされようが、世界は広い。
自分に似ている顔の人は世の中に3人はいると言われているし、面白がってしまった方が楽しいな、などと旅の終わり頃にはインドネシア人の楽天的な性格が移っている。住めば都とはよく言ったものだと思う。
それにしても。
住む国が違っていても、国境を越えて共通して盛り上がる話題は、やはり美味しい食べ物についてなのだから、食とは素晴らしいコミュニケーションを促す魔法のようである。
夕暮れになると宿の家族の晩御飯のおかずにする美味しい魚の塩焼き、イカンバカールを煙を上げながら焼いている香りがしてくる。
『食べる〜?』と、宿のお父さんが焼きたてを運んできてくれたのを『美味しい美味しい‼︎と』とガツガツ食べたあと、それがナマズだったと知ったときの衝撃もまた旅メシの想い出である。
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