コラッ!

強い雨が降る夕方のこと。シャンプーが切れたのを思い出して近くのドラックストアに向かった。

駐車場に車を停め店内の入り口に向かう途中、国道の歩道橋から子どもの騒がしい声が聞こえてきたのだ。

そちらに目をやると、小学校の学童クラブの子どもたちがスクールガードさんの引率のもと下校中のようであった。

先頭を行くスクールガードさんが下りの階段を下り始め姿が見えなくなったのをきっかけに三年生くらいの男の子たち3人が1人の男の子を傘で突いたり叩きはじめた。

『やめて!やめてよ‼︎』

傘で叩かれている男の子は必死で3人の男の子たちにお願いしているのであるが、彼らは面白がりますます調子に乗って叩きはじめた。叩かれている男の子は雨に濡れた階段からいつ滑り落ちてもおかしくないような状況なのである。

ドラックストアの店員さんは店内からその様子をじっと見ているが声をかけてやらない。

近くには女子高生のグループが心配そうに見ているが彼女たちも黙っている。

どうして?
なぜ誰も声をかけてやらないのだろう。

面倒だから?
知らない子どもだから?
自分の子どもじゃないから?

雨に濡れながら3人から一斉に傘で叩かれ突かれている男の子があまりにも痛々しくて胸が痛むのと同時に、周りの人間の無関心にも腹が立ってきた。

つかつかと歩道橋の階段下まで歩いていき、思わず大声を出していた。

『コラッ!危ないやろ‼︎何やってるねん‼︎』

知らないおばちゃんからいきなり叱られた悪ガキ3人は、ビクッとして固まった。

『友達が階段から落ちたらどうすんの‼︎』と声をかけると全力で逃げていった。

叩かれていた男の子は、ホッとしたような、哀しそうな顔で下を向き、とぼとぼ歩いていった。

叩いていた3人はスクールガードさんの姿が見えなくなったのを確認してから暴力を開始したのが見え見えだったので確信犯だと感じた。

『学童クラブの中はいじめが多い。』

学童クラブに子どもさんを預けているお母さんたちから聞いたことは何度もあったが、実際に目の当たりにしたのは今回が初めてだった。

働くお母さんが増え、夕方5時まで子どもたちを預かってもらえて、宿題を済まさせてくださる先生がついていてくれる学童クラブは人気であるが、こういう場面を目の当たりにすると、どこかで子どもたちはストレスを発散しているようにも感じてしまう。

お母さんが働くのが悪いのではけして、ない。

子どもが安全だと信じる最善の方法を考え、我が子を学童クラブに預けて仕事を頑張っているのだと思う。

しかし、もしご自分のお子さんがよそのお子さんを歩道橋から突き落とすような事態になったり傘の先で目を傷つけたりしたらどうするのだろう。

小学生のたわいない喧嘩で済めばよいが、おおごとになってしまってからでは取り返しはつかない。

命を落とすようなことになったら?
視力を失うような事故になったら?
加害者も被害者も小学生同士なのだ。

最後の最後は『やっぱり親の責任』ということになるのは決まりきっていることであるとは思うが、今回のような場面に遭遇したときには、迷わず周りにいる大人が注意してあげてほしいと思う。

『あの時危ないとは思っててん!』

事故や事件が起こってしまった後になってから、いくら『知ってる!』『見てた!』『聞こえてました!』と証言してもなんの救いにもならないのだ。

もし我が子や身内の子どもがそんな目に遭っていたとしたら?

そんな気持ちを心に持つ大人が増えることは子どもたちのピンチを救う。そして忙しいお母さんたちも同様に助けることに繋がるのではないだろうか?

#エッセイ

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