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女41歳。月9ドラマ『東京ラブストーリー』を見直す夜。

昔好きだった月9ドラマ『東京ラブストーリー』を観た。最終回はたしか高校の修学旅行だった。みんなで旅館のテレビの前に座り『カンチ‼︎何してんねん‼︎』とぼやいたことを覚えている。

カンチ役をしていたのは若かりし頃の織田裕二さんである。ヒロインのリカ役は鈴木保奈美さん。カンチの親友役の遊び人三上くんは江口洋介さんで、カンチと三上くんの幼なじみで2人の初恋の相手だった里美役は有森也実さん。

このドラマは当時社会現象になった大ヒットドラマであった。

女の子が男性に向かって明るく『SEXしよう!』というのだ。時代はバブル爛熟期。女性の社会進出が進み、キャリアウーマンが男性と肩を並べてバリバリ仕事をし、男性と同じように欲望を素直に口に出す、そんな時代だった。

しかし、改めて今見直してみると。
どんな時代の波が押し寄せようとも、男性というのは女性には恥じらいや処女性を求め、憧れてやまないのだということを代弁するかのようなドラマである。

初恋の相手だった里美が親友の三上くんをずっと昔から好きだったことに気がついたカンチは、2人を応援して自分は身を引き、そばでいつも励ましてくれるリカの明るさや奔放さに惹かれて付き合いだすのであるが、リカは本当はものすごく真面目で一途な女の子なのだ。

そのことがわかってくると、なんとなく面倒くさくなってきたような態度を隠せなくなってくるカンチ。

やはり一度も自分のものにはならなかった初恋の相手、里美が気になって仕方ないのがバレバレになってくるのである。

恋は追えば逃げる、追われると逃げたくなるという法則をわかりやすく表している展開なのであるが、高校生の頃観ていた時とはまた違った感情が湧いてきたのである。

当時は大嫌いだった里美がそんなに嫌じゃなくなっていたのだから私も随分スレたものである。

女癖の悪い三上くんと里美は一緒に暮らし始めるがやはり上手くはいかない。すると『三上くんに耐えられない!』とわかりやすく落ち込み、自分に気があることを十分わかっている男、カンチに相談してはメソメソさめざめと泣いてみせる里美を見て『ほんま鬱陶しい女やな!』と当時のJKたちは怒り、ブーブー大ブーイングの嵐だったのである。

しかしよく考えてみるとこれは相当に賢く、効率の良い結婚相手の選び方なのではないだろうか。

モテモテだった初恋の相手と結ばれるという夢を叶え、冴えない自分を磨くステップに利用し、しかし女癖が悪くいまだ医大生である三上くんは将来性のない男だと早々に見限り、安定している社会人であり自分に惚れ込んでいる男、カンチに『やっぱり私はあなたみたいな人が落ち着くの。』などと殺し文句を言って、恋人だったリカから奪い取るのだから、激しく肉食系なのは『SEXしよう!』と爽やかに口に出して言うリカよりも、この純情ぶった里美の方なのである。

良い女ほど男に恵まれないのはこういう里美的狡さがなく、一途でピュアな心の持ち主だからこそなのかもしれない。

私の周りにいる友人でむちゃくちゃイイ女だなと思う子ほど、この東京ラブストーリーの赤名リカのキャラクターにかぶるのも納得なのである。

私の友人の一人で、絶対に自分より若い綺麗な顔をした男でないと付き合わない子がいるが、別れが迫っている末期的状況の頃になると、尽くされ愛されることに慣れきった相手の男はえらいこっちゃなぐらい勘違いした状態になっている。

二股した挙句、2人の女どちらも選べない優柔不断さで、私の友人にむかって『誰も傷つけたくない!俺は海外に行ってマフィアになる!』などと何が何やらなことを言ったそうである。

『なんや!その病んだ詩人みたいな奴は‼︎』

そうツッコミを入れてしまったが、本人は『病んだ詩人〜⁉︎笑かさんといて‼︎ワーン‼︎』と笑いながら号泣しているのだからやれやれである。

頭も良く顔も綺麗で性格もいいくせに、あかん感じのダメ男に理解を示す懐の深さを持ちすぎ、ひたすら尽くしてやった結果恋は終わる。まさに宝の持ち腐れである。

しかし、また明るく次の年下の可愛い男の子を見つけてくるのだから毎度ながらあっぱれな女前の持ち主なので、私は彼女が好きである。

いろんなタイプの女がいるが、東京ラブストーリーの里美的やり方を持って過去の自分をやり直したいとはやはり思えない。

男女の恋愛に関しては、幾つになろうとも損得感情だけで性分は変えられないようである。

男に媚びることなく生きてきたが、奇跡的にもスナフキンという、ちょっと変わった男と巡り会い、素のままの自分で結婚出来たのはやはり喜ぶべきことなのだろうか。

秋の夜長の古いドラマ鑑賞は、いろんな感情を揺り動かす最高の娯楽である。


#エッセイ
#cakesコンテスト


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