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詩ことばの森㉝「雨の日の思い出」

だれの心のうちにもある思い出が、ふと何かの折に、浮かぶことがあります。思い出が小さくても大きくても、その人にとって忘れられない大切な経験だったのかもしれません。私の場合、詩や文章を書いていて、それまでは忘れていた記憶が、よみがえることが多いようです。よいこともよくないことも。

雨の日の思い出

歩いていたら 雨がふってきた
僕は 傘を忘れたので
雨宿りの場所を さがしたのだが
僕の宿れる屋根は 見当たらなかった
そのうちに 風さえ出てきたから
仕方がないので 貝殻に閉じこもった
若いころ 雨の海岸で拾った貝殻に

君と歩いた海岸に 雨はふりつづけ
そして 風さえ吹いていた
ふたりが入るには 貝殻は小さすぎて
君の頬は 雨にぬれていた
僕は 空を見つめたまま
悲しみをそっと ポケットにしまった








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