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秋の彩り㉜ 「品の良い」ご老人のように

今の住居に引っ越したのは二十数年前です。
あれから年月が経過し、年を重ね、上層階は、どちらかと言うと
高齢者が住んでいます。

このマンションは、独立性、プライベート性も、多少なりとも守られているため、住民と顔を合わせる事も、ほとんどありません。
それでも、決まって顔を合わせる人がいます。
朝、玄関や庭等を掃除してくれる住人。
一時間ほどトレーニングに出掛ける、アスリート体型の友達。
80歳前後の品の良いご老人です。

私が散歩から戻り、玄関でお会いする、品の良いご老人は、
「おはようございます。暑いですね。寒いですね」と短い言葉を交わすくらいです。
その後、ポストを確認して、散歩に出かけます。

いつもニコニコして、小さな声ですが暖かみがあり、後ろ姿がとても素直で謙虚で、暖かさがにじみ出ているように感じられるのです。
なぜか、その方にお会いすると「ほっ」として、にこやかになれます。

今回、エレベーター交換工事が1ヶ月の予定で始まり、A棟、B棟、C棟、…と独立しているため、他の棟のエレベーターを利用することが出来ず、階段昇降です。

工事中は、各階に休憩用の椅子が用意してあります。
ある日、階段を登って行くと「品の良いご老人」が、3階の椅子で休んでいました。「こんにちは。お疲れ様です。お先に失礼します。」と会話を交わします。
私も、4階くらいまでは何とか元気に昇れますが、それ以上は気合いで昇り、扉を締めたら「ハーハー」言っています。「品の良いご老人」は、あと7階以上は昇ると思います。

可燃ゴミの日。階段を降りると、4階で「品の良いご老人」にお会いしました。ゴミを手にしています。
ゴミ出し、簡単な買い物は、申し出により住人が代わりに行うことになっていますが、謙虚な方なので申し出なかったのでしょう。
代わりにゴミを捨てることを申し出ました。

「品が良い」とは「言葉や装い、佇まいに落ち着きがあり、
静かに話に耳を傾け、微笑みを絶やさず、穏やか」と書いてありました。
私も、自分を磨き、この「品のあるご老人」に近づけるように
と切に思います。
                         御室文美子


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