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詩ことばの森(132)「まだ見ぬ花」

まだ見ぬ花

僕は雨の中を君の行方を見つめていた
列車が通り過ぎたあとの静寂さに
残ったものは夜の闇と街の灯り

振り返ることもできなければ
望むこともできぬ   ましてや心など
震えた心などつかまえることもできないまま
プラットホームの無口な時間が過ぎていく

幻は幻のまま踊ればよい
きみも同じ時を過ごしていた崖の縁で
指を数えながらまだ見ぬ花を思っている

(森雪拾)



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