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詩ことばの森(158)「情念」

情念

森影に家々は沈んでいる
月の光が溢れだすと
岩肌は錆色に輝きはじめる

深い沼に秘められた物語を
繰り返し蘇らそうと
水は風もないのに波打つ

わずかに灯された光は
月や星ばかりではなく
蛇の眼だけでもない

くりかえされる歴史を
見届けようとして
立ち昇る情念と化してしまった

人びとの眼差しなのだろうか
けっして語られることなかった
名もなき人びとの

(森雪拾)


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