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詩ことばの森⑭ 「誘導鈴(ゆうどうれい)」

誘導鈴(ゆうどうれい)は、視覚障がい者が安全に移動するために設置された鈴のことです。わたしが、この鈴のことを知ったのは、中学生のころに見たテレビのCMでした。そのときは、鈴の名前さえ知りませんでした。どこかの福祉施設が画面に映し出されていました。それが、とても印象深く、今でも記憶に残っているのです。大人になってから、福祉の仕事に就いたことを考えると、音と映像の力は大きかったように思います。

誘導鈴

 
闇のなかを 鈴が鳴る
小さく しかしはっきりと響いている
 
闇のなかを いくつかの鈴が鳴る
それぞれの部屋の入口を示す
それぞれに異なる音色をたよりに
その人はゆっくりと歩いている
 
手すりに結ばれた小さな鈴に
その人の指が触れるたび響く
 
わずかな音色の違いを聞き分けながら
またゆっくりと歩きつづける
自分の部屋の入口に結ばれた
その人だけの鈴の音をさがして
 
闇のなかを 見守る女性(ひと)がいる
姿は白く霞み しかしたしかに立っていて
目の見えない その人を見守っている
部屋へと無事にたどりつけるように 
 
透んだ鈴の音が鳴り響くまで
いつまでも見守りつづけている
 
 

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