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砂の記憶 古びた机のうえに 置かれたままの 夏が残っていた だれかの語りつづける 言葉が漂…
深い水 わたしの魂は 深い水のなかに潜んでいる だれかが 岸辺をさまよっている 足音も無く…
懐かしい庭 自分は見たらしい 点滅する幻影の街を そこでは何も生まれず 繁栄もなければ衰退…
美しい街 孤独は空から降ってくる 雨模様ではなく 青空だったりする 都会の街並みに あるいは…
朝の森で 神奈備の木に花が咲き 天が喜び 地が潤い 依代は輝きを灯しつづけた あれから季…
古城の夢 山あいの村には昔 小さな城があった 崩れ落ち土と化しつつある 石垣だけが残ってい…
情念 森影に家々は沈んでいる 月の光が溢れだすと 岩肌は錆色に輝きはじめる 深い沼に秘められた物語を 繰り返し蘇らそうと 水は風もないのに波打つ わずかに灯された光は 月や星ばかりではなく 蛇の眼だけでもない くりかえされる歴史を 見届けようとして 立ち昇る情念と化してしまった 人びとの眼差しなのだろうか けっして語られることなかった 名もなき人びとの (森雪拾)
流離う人に 流離う人に 風は 時に冷たく 時にやさしい いい人を気取らず 親切は素直に受けた…
(木々のあいだに) 木々のあいだに 箱庭のような町はあった 古い神社の鳥居が 森の中で朱色…
薔薇の庭 古い石の椅子に やわらかな午後の光が 落ちている森 長い沈黙に耐えてきた 苔むした…
森を歩く こもれびの道を 僕は歩いていた 森を抜けると 湖へと着くはずだった 四月だという…
残照 川辺りに広がる夕空を 渡ってゆく鳥の飛翔よ 無言のうちに 秘められた残照が わたしの心…
眠れぬ森 眠れぬ森に 夜が訪れる 花は白く 物思いにふける 森をさまよう影は あたかも 体の…
天駆ける星 暗闇の窓を光がかすめる かつての栄光の者は消え去り 眩い堕天使たちが 綺羅びやかさを競う夜 時間も空間も存在しない宙で 天駆ける星の主は 掴めないどころか 見極めがたいほど 次々と変転する虚空 異次元の者と呼ぶべきか おまえの名前を (森雪拾)