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変な家2読んだ

私はなるべく作者とその作品を分けて認識する様にしている。それが音楽であれ文章であれ、作品が好きでも作者は別に好きではないなという場合も多い。
そんな中、雨穴さんは割と特例である。彼(あるいは彼女)の作ったものだから気になるけれど、中には嫌悪感を覚えるような二度と見たくないものもある。気持ち悪いしなんだかよくわかんないし説明もできないし理解できない、だけどできれば作者さんごと好きになりたいんだよな……と思ってしまう……謎の感情……

※下記、ネタバレとセンシティブな内容を含みますので閲覧ご注意ください

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変な家2を読みました。

映画でも「2」ってタイトルに付くものは基本的に前作を超えてくることってあんまり無いんだよなと思っていたけれど、これは個人的に前作を超えたな~と思ったのでメモです。

1.とにかく読みやすい

読んでいて思ったのは「小説じゃ無いな」ということです。ほぼ全編に渡り会話文や図式で構成されているので、感覚としては雑誌の対談記事を読んでいるような……ノベルゲームの画面や映画の脚本を追っているようなイメージに近いのかなと思いました。全ての事件をひとつひとつ種明かししてそれを繋げていく内容なので、ミステリーの「解決編」が400ページに渡ってずっと切れ間なく続いているように錯覚し、途中で読むのをやめるのが難しかったです。一気に読んじゃった。
別物ではありますが、最近話題になった【近畿地方のある場所について】に近い構成かな、と感じました。

2.真実と虚構の織り交ぜ方が上手い

「作者の創作」と「実際にある場所・名称」が上手く混ざっていて、まるで本当に史実として全て身近で起きた事のように思える手腕がさすがだなと思いました。
例えば「置棟」(売春宿として作られた二階建てアパートのような見た目の建物)という言葉は存在しませんし、「再生のつどい」(カルト宗教団体)も「明眸逗留日記」も存在しない名称ですが「オウム真理教」「富山県高岡市」「愛知県一宮市」「サンデースポーツ」「大島てる」など、誰しも聞いたことのある名称も話の中に並行して出現します。そうすると解像度がグッと上がる。主人公の名前も「筆者」とし、詳しい設定を与えないことで、あたかも今この本を呼んでいる自分自身が取材した記録のように感じられます。が、終わりになるにつれ話はものすごく壮大になるので、最終的にはフィクションとして後味の悪さを咀嚼できるのが救いです。

3.手放しではお勧めできない内容

読みやすい文体と謎解きミステリーのような構成ですが、主に小児虐待(性的・死に至る暴力)、身体障碍者のビジネス的利用と侮蔑、女性の性的搾取を最初から最後まで休みなく取り上げた内容です。話の要素のひとつとかではなくそれが休み無く連続して起きるので、見ていて気分が悪くなるレベルです。わくわくしながら読むものでも無ければ、問題提起として謳われているものでもありません。
エンターテインメントとして楽しむべき本ではない事を念頭に置いた上で、それでもこの鬱屈としたショッキングな内容を、詳細な描写をあまり含まずに淡々と「事実として」述べることで、より刺激的なモノを求める大人の読者も読み応えを持たせる本になっているのかなと思います。

おすすめできるかどうかは別として、これだけの内容とボリュームのものを人々に読みたいと思わせる力が大きいのも、雨穴さんのこれまで出してきた作品によるものなのかな。
子供に読ませたいかと言われるとはっきり「NO」だけど、小学校高学年~中学あたりの自分だったら是が非でも読んでたしめちゃくちゃハマってただろうな……
おもしろいと言うこと自体不謹慎な気がするけど、とにかくもう1回読みたくなるし話題にしたくなる。そんな本だと思います

ところで雨穴さんしおりってどこで配ってたんですか?!
知らなかったんだけど!!!!

おしまい


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