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冬空と煙草

ああ、このまま溶ける様に意識が消えてしまえば、と布団の中で願っているけれど、時間は残酷で何事もなく毎日が始まる、生きる事そのものが地獄ではないのかというのが僕の考えだけど、世の中を見た限りではどうやら僕は少数派らしい。世界ごと消えてしまえなんて願うほど怒ってはないし、僕だけが消えたところで何も変わらないのも承知している、不確定な未来は暗く濁って見えるし、生きている意味も死ぬ意味もないとなれば、虚無主義者になるしかない。そうすれば、世捨て人を気取れば、現状を変える劇的な行動を自ら起こさなくていいからだ、と考えながらとりあえずベランダに出て、ピースに火をつける。少しでも寿命が縮めばいい、なんて不毛な事を願いながら煙を眺める、ほんのりバニラの香りがする煙は冬空に、白い吐息と混ざって溶けて行く。現状は、何も変わらない。正確には、かすかな希望と大きな憂鬱を抱いて、だらだらと斜め下に向かう人生を受動的に過ごすだけだろう。

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